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赤い鬼と青い鳥

赤い鬼と青い鳥 最終話

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 「お姉ちゃん、起きてよ」
 妹が、私の顔を覗き込んでいる。
 「もうすぐ私の結婚式なのよ、こんなところで居眠りしないで」
 ウェディングドレス姿の妹が目の前にいる。
 「あ、ごめんね」
 私は、いつか従姉のヒカルちゃんの結婚式で着たドレスだ。
 「会社、忙しいの?」
 妹が言った会社名は、やり直しをする前の会社だった。
 「まあまあかな」
 「だからって、式の途中で居眠りするのはやめてよ」
 「大丈夫」
 妹に笑いかける。
 きっと、私は元に戻った。大丈夫だ。

 「きれいね」
 妹に言った。
 「ありがとう。ブーケ、お姉ちゃんの方に向かって投げるからね」
 
 扉が開いて、妹の結婚相手が入ってきた。
 「準備、できた?」
 「うん。カンペキ」
 二人は、ほほ笑み合っている。

 「妹を、よろしくおねがいします」
 結婚相手のトオルさんに向かって、頭を下げた。
 「こちらこそ」
と言った彼は相変わらずいい男だったが、不思議と妹に嫉妬する気にはなれなかった。
 「それじゃ、先行ってるわ」
 そう言って、式場へと向かった。

 両親の隣りに座る。
 「あんたより先にルカが結婚するなんてねえ」
 と、母が言う。

 長い夢を見ていたような気がする。
 ふと思い立って、母に聞いてみた。
 「ね、私のピアノって、まだ実家にある?」
 「なに言ってるの、とっくにないわよ」
 やり直しの前は、実家にあったはずだ。
 「とっくに、っていつ?」
 「あら、いつだったかしら。思い出せないわね……。最近だったような、ずっと昔だったような」
 「じゃあ、絵のセットはどう?私、むかし習ってたじゃない」
 「ああ、あれね。あれも、どうだったかしらね。もうないような気がするけど……。どうしたの?急に」

 間違いない。一連のやり直しは、夢ではないのだ。
 「ううん、ただ懐かしくなっちゃっただけ。」
 と答えておいた。

 式は滞りなく行われた。
 幸せそうな妹を見て、涙がこみ上げてくるのを感じた。
 両親は、とっくに泣いていた。

 続いて、ブーケトス。
 ブーケは、約束どおりまっすぐ私の方へ飛んできた。
 すとん、と私の手の中に落ちた。

 式が終わると、披露宴会場へとみんなが移動していった。
 「ごめん、忘れ物しちゃった」
 一緒に移動していた両親に言い訳し、誰もいなくなった教会に入った。

 「ねえ」
 声をかけると、ジウバがうっすらと浮かび上がった。
 「ありがとう、元に戻してくれて」
 「元に戻したわけじゃない」
 「なにか、変わってるの?」
 「ああ」
 「どう、変えたの?」
 ジウバは、質問には答えてくれなかった。

 「やりなおしは、もうできない。あの結晶は汗と涙の結晶。いわば今までそなたが生きてきた証だ。もし同じだけの結晶を集めようと思えば、また30年かかるからな」
 「失礼ね、私はまだ29歳よ」
 ジウバは、軽く笑った。
 「ね、やり直ししなくても、ここに来ていいかな。あなたと、もっと話がしたい」
 彼は、すぐにいつもの無表情に戻った。焦ったり困ったりしていた昨日が嘘のようだ。

 「悪いが、もうお別れだ」
 「え」
 「もう、私に会うことはない」
 ジウバの影が、薄くなりはじめた。
 「ちょっと待って、どうして」
 「ありがとう、久しぶりに人と話ができて、楽しかった」
 「待ってよ、まだ聞きたいことがたくさん」
 ジウバはどんどん薄くなる。
 「そなたはきっと、うまくいく」

 「待って」
 そう言った時には、もうジウバは見えなくなった。
 後ろの扉が開いた。
 「すみません、そろそろ披露宴が始まります。ご移動をお願いします」
 式場のスタッフだった。

 披露宴に向かう途中、化粧直しのためにお手洗いの鏡の前に立った。
 マスカラを丁寧に塗りなおすと、披露宴に向かった。

     ******

 ジウバは、披露宴へと向かうミチルの後ろ姿を見つめていた。

 ミチルのスキルを振りなおすとき、固有スキルに半分、振ることにした。
 人間の固有スキルとは、他者への共感能力、いわゆる優しさだ。
 彼女は生きるにおいて戦うことに必死で、ピアノ、絵画、ダンスと言った武器スキルにばかり目を向け、固有スキルには一切振っていなかったのだ。

 残りの半分は、いつでも彼女が自分で振りなおしをできるよう、スキルを振らない状態で置いておいた。
 きっと彼女はいつか気づいて、残りを必要なスキルに振るだろう。

 ジウバは、自分がなぜ彼女の前に姿を現すことができたのか、なんとなく理解した。
 その昔、多くの戦士たちが戦うことに夢中で、固有スキルを軽視していた。しかし、固有スキルこそが重要だということに気付いた彼らは、こぞってやり直しのため自分の元を訪れた。
 私には、彼女がそんな戦士たちと重なって見えた。
 

 きっと、彼女が私に会いたかったわけではなく、私が彼女に会いたかったのだ。
 もう、彼女は大丈夫。
 そう思った。


 そしてジウバは、本当に姿を消した。

     ******

 披露宴は、笑いあり、涙ありの数時間だった。
 幸せそうな妹に、惜しみなく拍手を贈ることができた。
 これが、ジウバが変えてくれた部分なのだろうと思った。

 部屋に帰ると、青いセキセイインコのチルチルが迎えてくれた。
 私は、チルチルの可憐な鳴き声が大好きだ。

 私は今、不幸じゃない。
 かといって幸せでもない。

 でも、きっと私はこれから幸せになれる。
 そんな予感がした。


 <完>





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