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赤い鬼と青い鳥

赤い鬼と青い鳥 5話

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「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
「起きてってば、もう」
「信じられない、教会で居眠りするなんて」
やはり、妹の声で目を覚ました。

今度は、ダンスにスキルを振った。
なかばヤケだったことは否めない。

「ルカちゃん、結婚するの?」
まず、妹に確認した。
「やだお姉ちゃん、寝ぼけてるの?結婚するから下見につきあってもらったんじゃない」
「そっか、そうだったわね。お相手の方、名前はなんだっけ」
「トオルさんのこと?あったことあるでしょ。大丈夫?」
「うん、大丈夫、大丈夫」

はっとして免許証を取りだすと、以前暮らしていたマンションの一室の住所が書いてあった。どうやら貧乏暮しはしてないらしい。まずは一安心。

「あー、やっぱりここアザになっちゃってるね」
妹が私の肘のあたりを指しながら言った。たしかに青痣ができている。
「あ、ほんとだ、どうしたんだろう」
「どうしたって、ダンスの練習中に他の人とぶつかっちゃったんでしょ、言ってたじゃない」
「あ、そうだった、そうだったわね」
記憶はなかったが、とりあえずごまかさなければならない、と思った。
「ほんと、小さいころからお姉ちゃんはダンス一筋だったけど、まさかプロのダンサーになるなんてね。来月もどこかで公演あるんでしょ?」
「うん、たぶん」
「それに彼氏もダンサーさんでかっこいいしね。ケンジさんとはうまくいってるの?」
「そうなの?」
思わず聞き返してしまった。妹が不思議そうにこちらを見つめてくる。
「そうなの、って何が?」
「あ、いや。まぁまぁかな」
「もう、お姉ちゃん、ぼうっとしすぎだよ」
「ごめんね」
恋人、ケンジ。会ったこともない私の恋人。

「ね、このアザ来週の式には消えないよね。ドレスとかどうするの?こないだ従姉のヒカルちゃんの結婚式の時のやつだと肩も出ちゃってたよね」
「まあ、なんとかなるんじゃない。新調してもいいしね」
「そっか、そうだよね。お姉ちゃんスタイルいいもんね。私も式まで気をつけないと。ウェディングドレス入らなくなっちゃったら困るー」
妹が屈託のない笑顔を向けてくる。とても幸せそうだ。
「もう用事は済んだんだっけ?そろそろ帰ろうか」
「そうね、もう大体終わったかな。お姉ちゃんが居眠りしてる間に-」
妹がからかってきた。
壁にかかった鏡に、彼女の肩ごしの自分の顔がうつっているのがみえる。幸せなのか不幸なのか、その判別はつかなかった。
「もう、ルカちゃんたら」
「じゃあもう帰ろ。式、来週の土曜日14時からだから。親族なんだからちょっと早めに来てよ」
「はいはい、わかってるよ」

彼女と別れ、タクシーに乗り込んだ。
一刻も早く家に帰って、自分の世界がどんな変化をしたのかが知りたかった。

部屋の前に着くと、ひとつ深呼吸をした。この部屋に帰ってくるのはずいぶんと久しぶりな気がする。
部屋の鍵を鍵穴に差し込み、祈りながら鍵を回した。
どうか開きますように。

すると同時に、部屋のドアが内側から開き、見知らぬ男が出てきた。

「おう、おかえり」
「え」
「なにしてんの、早く入れば」

男は中へ入るよう促した。
そこから覗いた部屋の中は、以前暮らしていた部屋とは家具の配置がかなり変わっていたが、見覚えのあるインテリアもいくつか見えた。
まちがいない、ここは私の部屋。ということは。

「ケンジ、さん?」

「なんだよ、さんづけなんかして。気持ちわりぃな」
改めて男の顔をみると、なかなかにいい男だ。背は高く、切れ長の目とちょっとクセのある口元が印象的だった。彼が自分の恋人なら、どこに出しても自慢できる。
「な、腹減った。なんか作れよ」
「うん、ちょっと待ってて」

以前の自分なら、男にこんな言い方をされれば腹を立て、「私はあなたの母親じゃないのよ」なんて言ってしまっただろう。しかし、素直に従ってしまうのは、目の前にいる男がとても魅力的だったからだ。
さて、何を作ろうか。うきうきと冷蔵庫を開け、考え始めた。こんなに楽しい気分でキッチンに向かったのは何ヶ月ぶりだろう。ひょっとすると、はじめてかもしれない。
「ね、ケンジさん、親子丼でいいかな。鶏肉と玉ねぎと卵しかない」
「おう、俺、お前の親子丼好きだよ」

ありあわせの材料で作った割には、美味しくできたように思う。きっとこの世界では、今まで私はそこそこ料理もしてきたのだろう。できあがったご飯を食べる恋人を見て、きっと私は幸せなのだろうと思った。

「お前さ、今日なんか変じゃねぇ?俺のことケンジサンなんて呼ぶしさ」
食べ終わった彼が、箸を置きながら言った。
「え、そうかな」
「いつもみたいにケンジって呼べよ。なんかくすぐったい」
「わかった、ケンジ」
どうしても、彼をそう呼ぶのは照れてしまう。
彼の名前を呼ぶだけで、心臓の音が速くなるようだ。

「なんだよ、変なやつ。」
彼がにやにやしながらこっちを見ている。
恥ずかしい気持ちが強く、なかなか彼の顔を直視できなかったので、食器を洗うためにシンクまで食器を運んだ。同棲していた昔の男と、自分ばかり家事をするのが気に入らないと大喧嘩したことを思い出した。人は変われば変わるものだ。

「なぁ、こっちこいよ、テレビにお前の好きな芸人でてる」
彼が、二人掛けのソファの右側に座り、その左側をポンと叩きながら言った。
それがたまらなく嬉しくて、簡単に手を拭くと彼の隣りに座った。
彼は私の肩に腕をまわしてきた。
だめだ、どうしても照れてしまう。

「今日、どこいってた?」
そんな風に聞かれたって、彼の顔を見ては答えられない。第一、この距離で彼の方を向くなんて距離が近すぎる。
「来週、妹の結婚式だから、その下見につきあってきたかな」
テレビのほうを見ながらそう答える。さっきから、テレビの内容なんてちっとも頭に入ってこない。
「そっか」
ふと、私たちは結婚しないのだろうかと思ったが、そんな事は口に出せない。重い女と思われるのは嫌だ。

そのとき、寝室で鳥の鳴き声がした。チルチルの声だ。
「あ、今日チルチルにエサあげたかな」
そういってソファから立ち上がった私の手を、彼がとった。
「大丈夫、俺さっきやっといた」
彼が、私の手首をつかんだまま、まっすぐに自分を見つめている。その目に、吸い込まれそうだった。

   ******

翌日から、私のダンサーとしての生活が始まった。
バックダンサーとして踊りつつ、週3回、近くのスポーツジムでインストラクターのアルバイトをしていた。
アルバイトとはいっても、そこそこの収入はあるようだった。
初めてすることばかりだったが、やってみるとどれもこれも案外うまくいくものだ。ずいぶん体に染みついているようだった。


妹の結婚式の前日、式に着ていくためのパーティドレスを買った。彼女の言うとおり、肘のアザはなかなか消えなかったので、アザを隠せるようなものが欲しかったのだ。

「あれ、なんでそんなキャバ嬢みたいな服着てんだ」
家に帰って買ったドレスを試着していると、ケンジが帰ってくるなりそう言った。
「キャバ嬢って。ひどい」
「だってどっから見たってキャバじゃん。背中開きすぎじゃね」
たしかに背中はざっくりと開いていたが、気になるほどじゃない。
「このくらい普通じゃないかな」
「んな服どこに着てくんだよ」
「明日、妹の結婚式があるっていったでしょ?」
鏡を見ながら、そう答えた。

「なぁ。その服着るのやめろよ」
彼がつっけんどんに言う。
「どうして?かわいくない?」
「派手すぎるからだよ」

ひょっとして、やきもち妬いてる?
かわいい、と思った。嬉しかった。からかってみたかった。
「やだ、気にいってるんだもん。せっかく買っちゃったし。式と披露宴だけだし、いいでしょ?」
彼は返事をしなかった。納得してくれたと思った。

彼の方を振り向いた。
私をめがけてテレビのリモコンが飛んできた。
とっさに避けることができた。
後ろで、リモコンが壊れる音が聞こえる。

「なにするの」
私は非難の声をあげたが、彼は怒りの表情でこちらに向かってくる。
「俺は着るな、っていったんだ」
彼は静かにそう言った。いい男は怒っても様になるんだな、なんて呑気に考えていた。

「いいじゃない、このくらい」
私が反論すると、彼と私の間にあるサイドテーブルが大きな音を立ててひっくり返った。
彼がおもいきり蹴飛ばしたからだ。私はここでようやく、恐怖を感じた。
「やめてよ。どうして?そんなに怒ること?」
彼は私には答えず、ただ舌うちで返した。

逃げたかったが、体は思うように動かず、彼に手首をつかまれた。
すごい力だ。

「痛い、お願いやめて」
彼は私の手首をつかんだまま、こちらを睨んでいる。
「わかった、着ない。この服はやめる。だからお願い、許して」
私は後ろに突き飛ばされ、尻もちをついた。

まだ怒りがおさまらない彼は、手当たり次第に目に着くものを床に叩きつけた。

どうして、どうして。

ひときわ大きな音がしたのでそちらを見ると、彼が鳥かごを落としたところだった。
チルチルは何が起こったのかわからず、鳥かごの中で騒いでいる。
「うるせぇよ」
彼が鳥かごをさらに蹴飛ばすと、その拍子に鳥かごの扉が開き、中からチルチルが飛び出した。
また舌打ちをした彼は、部屋の窓を大きく開け、「出て行け」と叫んだ。

チルチルは、その窓から飛び立っていき、その青い色はやがて夜空に溶け込んでみえなくなった。

彼は私の方に向き直り、また睨みつけた。
「なんか文句あんのか」
あまりに突然のことで何も考えられなかった。
また彼が近づいてくる。
私は首をふることしかできない。
「いや」
怖い。
「いや、じゃねぇよ」
助けて。
「俺はこんな服を着るなって言ったんだ」
彼は買ったばかりのパーティドレスを、力任せに引き裂いた。


深夜4時。
呆然とする私の横で彼が寝息を立てている。
どうしたらいい?
自問自答をするも答えはみつからない。
やりなおしのための宝石はもう手元にない。
気がつくと、肘のほかに脚と腰にもアザができている。
この肘のアザもきっと、そうだ。

とりあえずの服を着て部屋の外に出た。
行くあてなんてない。

気がつくと、妹が挙式予定の教会までふらふらとあるいてきた。

やり直しのせいで、私はどんどん不幸になっていく。
やり直しを、やり直したい。


神様、仏様、鬼様。

どうか、私の世界を、元に戻してください。





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