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赤い鬼と青い鳥

赤い鬼と青い鳥 4話

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 「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
 妹が私を呼ぶ声が聞こえる。
 「大丈夫?お姉ちゃん」
 目が覚めると教会だった。

 あのあとまた教会に来て、やり直しをしたのだった。
 今度は、絵画スキルを100にした。昔、絵本作家になるのが夢であったことを思い出した。趣味で絵をかきながらゆっくり仕事をするのもいい。なにより妹と争うのはもう嫌だった。

 「お姉ちゃん?」
 妹が私の目を覗き込んでくる。
 さっきまでの妹とこの妹は違う、ということは分かっているが、とても顔を見て話は出来そうもなく、思わず目をそらした。
 「ね、ウェルカムボードの件、大丈夫だよね?」
 「ウェルカムボード?」
 「トオルさんも、お姉ちゃんの絵、大好きなんだって」
 「ああ、結婚式か」
 やはり、妹は彼と結婚するのか。

 頭がくらくらする。

 「ごめん、今日はもう帰る。頭いたい」
 「ほんとに大丈夫?」
 「大丈夫。じゃあ。」
 妹の顔は見ずに、立ち上がった。
 「ねぇ、ウェルカムボード」
 「わかった。準備しとく。」
 「ありがとう!助かるよ。ね、お姉ちゃん。ウェルカムボード用意してもらうんだから、祝儀とかいらないからね」
 「え?お祝いはお祝いでしょ。ちゃんと渡すわよ」
 「うん……無理しないでね」

 頭がさらにガンガンしてきた。
 「ごめん、もう帰る」
 「わかった。お大事にね」
 妹の言葉を、最後まで聞く元気はなかった。

 ふらつく足元で、なんとか家までたどりついた。一体、私はどうしてしまったんだろう。
 鍵を鍵穴に差し込むが、まわらない。
 「どうして……」
 部屋を間違えただろうか、いやここで合っている。

 その時、ドアが内側から開いた。若い男が中から出てきた。
 「お前、誰?」
 あなたこそ、と言いかけたところで気が付いた。
 ここは私の家じゃないのだ。
 「ごめんなさい、間違えました」
 男は、怪訝な顔をこちらに向けながら横を通り過ぎていった。

 頭痛はますますひどくなり、立っていられず座り込んだ。
 意識が遠くなるのを感じた。

     ******

 目が覚めると、病院だった。薬品のにおいが鼻を突く。
 「お、目が覚めたか」
 声のする方に顔をやると、“妹の”婚約者がいた。
 「どうして」
 「ただの貧血だってさ」
 「どうしてあなたがここに」
 「あぁ、ルカちゃんが君にウェルカムボード頼んだろ?その件で俺からもお礼を言おうと思ってさ。で電話したらここの病院の人が出て、倒れて運び込まれたって言うから慌ててきたってわけだ」
 「……そう。」
 彼から視線を外し、天井をみた。真っ白に思えた天井にもよくみるとシミがいくつか浮かんでいる。
 「あのさ、なんか欲しいものとかあったら買ってくるけど、なんかある?」
 「しばらく、一人になりたいかな。どうもありがとう」
 彼の目は見ずにそう答えた。

 しばらく沈黙が続いたが、彼は帰る気配がない。ふと彼の方に目を向けると、こちらを見ている彼の視線とぶつかった。
 「じゃあ、俺はこれで。なんかあったらいつでも電話して」
 そういうと彼は病室を出て行った。

 私は、このやり直しでも幸せになれていない。
 そんな予感が胸を圧迫する。
 目を閉じると、いつの間にか眠りについていた。

     ******

 翌朝目が覚めると、気分はかなりすっきりしていた。
 もう退院してよさそうだ、と医者に言われたので荷物をまとめていると、免許証の住所が記憶と違っていることに気がついた。やり直しのせいで、暮らす部屋も変わったらしい。それで知らない人が私の家“だった”所に住んでいたのだ。
 病院の会計をしようとすると、昨日お見舞いにきた男の人が払ってくれたという。
 妹の婚約者である彼が会計までしてくれたことに驚きつつ、やはりイイ男であったことを痛感した。妹への嫉妬心が強くなっていた。


 「え」
 思わず声がこぼれた。
 免許証の住所を頼りに自分の部屋を探してみると、思いのほか古いアパートであったのだ。築30年は経つかという木造の、歩くたびにギシギシと音をたてる安普請の造り。
 何かの間違いで会ってくれという願いもむなしく、キーホルダーについた鍵は簡単にそのアパートの一室を解錠した。
 部屋の中も以前の部屋とは違い、ノーブランドの食器、古い家電製品、薄っぺらいカーテン、どこを見ても貧しい暮らしが透けて見える。片隅にはキャンパスと絵筆があり、かろうじて絵描きの部屋であることを物語っていた。

 チルチルはどこにもいなかった。

 どうしてこんなことになったのだ。

 祝儀をいらないといった妹、気付かぬうちに病院の会計を済ませたその恋人、彼女たちの意図をこの時ようやく理解した。
 貧しい暮らしをする姉へ、義姉へ、救いの手を差し伸べたのだ。

 彼女たちの行為は親切心じゃない。憐れみだ。

 そうこう考えていながら自分が書いたという絵を一枚一枚みていくうち、なんとなく自分が置かれている状況を理解できた。
 絵描きを目指したがなかなか機会に恵まれず、かといってなまじ才能があるものだから諦めきれず、といったところだろう。

 ばかばかしい、と思った。
 こんなところで埋もれてしまうような才能は所詮その程度だ。
 さっさと見切りをつけて趣味で絵を描きながらふつうに働けばよかったのに。

 やり直そう。
 宝石はまだ1つあったはずだ。

 これ以上、妹に憐れみの目でみられるのはごめんだ。
 家中をひっかきまわすと、お米のなかからビニール袋に入った宝石が出てきた。
 隠す場所すら貧乏くさい。

 宝石を握りしめ、例の教会へ走った。

 「おねがい、もう一度やり直しをさせて」
 誰もいない教会で祭壇に向かって声をかけると、いつかの鬼がうっすら浮かび上がった。
 「またか。すこしやり直しを簡単に考えすぎてないか?残された宝珠はあと一つしかないだろう。」
 「わかってるわ。でもこのスキル配分じゃ、以前の私より幸せになるどころかかえって不幸になってるじゃない」
 「それがそなたの選択だろう」
 「そうだけど……少し間違えただけよ」
 「違う。そなたは考えていないのだ。ただ与えられた選択肢に飛びついているだけ。そもそもそなたの求める幸せとはなんだ?」
 「それは」

答えられなかった。

 「それだからやり直しの結果どうなっても満足ができないのだ。あいまいに描く幸せの形にぴたりと当てはまる現実なんてそうあるはずもなかろう。少し考えればわかることだ」

 まさか鬼に説教をされるとは、思いもよらなかった。

 「じゃあ私は一体どうすればいいのよ」
 私は思わず大きな声を出したが、目の前の鬼はため息をついて私から目をそらした。
 「ねえ。そんなに偉そうに言うなら教えてよ。私はどうすればいいの」

 「そなた、私の言うことを聞いていたか?私は考えろ、と言ったはずだ。どうすればいいのか、そなたの思う幸せとは具体的にどんな形か、それを実現するためにはどうすればいいか、それは己が考えることだ。人に尋ねるものではない。まあ、のこされたチャンスは一度きりだが。」

 私が思い描く幸せとは何か。

 素敵な恋人、ある程度余裕のある暮らし。
 違う、それだけじゃない。

 妹だ。
 小さいころから私の持ち物を笑顔と泣き顔で横からほとんどかっさらっていった妹。
 彼女よりも素敵な恋人、彼女よりも余裕のある暮らし。
 それが私の思い描く幸せ。

 あらためて考えると、自分がすごく小さな人間に思えた。

 スキル配分は、均等にふっても、ピアノにふっても、絵画にふってもだめ。
 残されたスキルはダンス、残された宝石も一つ。
 やり直しはこれが最後。
 このやり直しの結果がどんなに不幸でも私はその世界で生きていかなければならない。

 「決めたわ」
 「本当に、それでよいのか?そなたの持つ宝珠はあと一つのみだろう?」
 「いいの。どんなに現実が気に入らなくてもそこで生きていかないといけないのはみんな同じでしょ。後悔はするかもしれない。でも、この世に後悔せずに生きていられる人間がどれだけいるっていうの」
 「わかった。ではその宝珠を炎に掲げるがよい。」

 宝石が炎にすいこまれていく。
 その炎を見ていると、また意識が遠のくのを感じた。





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応援しています^^

足跡から来ました(^-^)

とても、面白いです!
これからも、楽しみに読ませていただきますね(^-^)/
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