スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←あひるの子はみにくい 17話 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 赤い鬼と青い鳥
もくじ  3kaku_s_L.png 眠りの森の天使
もくじ  3kaku_s_L.png 人魚の王子様
【あひるの子はみにくい 17話】へ  
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 18話

 ←あひるの子はみにくい 17話 

 「なあ、全身が痛くなる病気って何がある?」
 先生に問題を出された翌日、塾にシンタロウは、隣にいた親友のリュウスケに訊いてみた。
 「さあ?あ、痛風とかじゃね?」
 「ふうん、痛風かあ」
 リュウスケは、合点がいかない様子でこちらを見ている。
 「なんだよ、それ?」

 「クイズだよ、クイズ。頭が痛いって病院に来た男が、全身が痛いって言い出すんだって。なんの病気でしょうっていう。」
ヒロコ先生に出された問題だったことは黙っていた。
 「で、答えは?」
 リュウスケに逆に聞かれたが、「さあ、俺も知らない」と答えた。

 その日はムカイの授業があったが、授業中ずっとヒロコ先生の問題のことを考えていた。

 男が病院に来た。頭を押さえると痛む。医者が男の頭を触ったが、平気。脳は異常なし。頭だけじゃなくて、全身が痛む。触るだけで痛む。男の病気は何だ?
 医者が触っても痛くないなら、痛風じゃない。
 何だろう?

 「神谷、聞いてるか?」
 ぼーっとしてるように見えたんだろう。ムカイに注意された。
 「今、なに説明してた?」
 ムカイは自慢げな顔で質問してきたが、俺がスラスラと答えると一瞬悔しそうな顔をしてから授業に戻った。

 わざわざ自分から恥をかきにくるなんて、バカな奴。

 ムカイの面白くない話は、ちっとも頭に入ってこなかった。

 「さっきの話だけど」
 授業が終わってから、急に話しかけられたので驚いた。
 振り返ると、マサオが俺の顔色を窺いながら立っている。
 「さっきの話なんだけど、もう一回聞かせてくれる?」

 「さっきの話って?」
 マサオのその態度に、軽く苛立った。
 「全身が痛む病気、ってやつ」

 「なんだ、盗み聞きかよ」
 そういうと、マサオは少し怯んだようだ。
 「まあいいや。男が、頭が痛いって病院にきた。医者が男の頭を触った時は痛くなくて、脳にも異常なし。頭だけじゃなくて、全身が痛む。触るだけで痛む。男の病気は何だ?っていうクイズ。なんだよ、お前に分かんのかよ」

 マサオは、少し考えこんだ様子だった。
 「その人は、頭を押さえると痛がったんだよね?」
 「ああ」
 「全身が痛むって言ってたけど、具体的にはどこ?」
 「ヒジとかヒザとか、色々。憶えてねえって」

 しばらく黙ってしまったマサオにしびれを切らし、リュウスケのほうに向きなおった。
 「リュウスケ、帰ろうぜ」

 後ろでマサオが言った。
 「右手」
 マサオがまっすぐこちらを見ている。
 「右手の、骨折とか?」
 もう一度言った。

 「お、すげえ、それじゃん。全身触ると痛いのに、医者が触っても痛くない病気。」
 隣で、リュウスケが感嘆の声をあげる。
 なるほど、そうか。

 だが、答えが分かったのに、面白くない。
 こんなやつに解けるクイズが解けなかったことが、面白くない。

 「サンキュ」
 とりあえず礼だけ言って教室を出た。

 「アイツに分かっちゃったのが悔しいんだろ」
 教室を出てから、リュウスケにからかわれた。

 本当に面白くない。

    ******

 マサオが塾から帰るバスに座っていると、ふわっといい匂いがした。
 あ、この匂いは。

 「笠原くん、今日もこのバスなんだね。」
 隣にヒロコ先生が座っていた。
 慌てて音楽を聴いていたイヤホンを外した。

 「なに聴いてたの?」
 ヒロコ先生が自分の耳を指しながら聞いた。

 「あ、これです」
 僕は鞄からCDを一つ取りだした。
 『HUZA』てバンドのアルバムだ。
 ジャケットには青白い顔のイケメンが載っている。

 「へぇ、ちょっと聴かせて」
 ヒロコ先生は僕のイヤホンを片方受け取って、自分の耳に入れた。
 今、何の曲が流れているんだっけ。
 もう片方を自分の耳に入れた。
 僕の一番好きな曲だ。

 「いい曲だね。とっても格好いい。」 
 曲が褒められているのに、まるで自分が褒められているようで、気分がよかった。

 「あ、あの、よかったらコレあげます。データはパソコンに入ってるし。」
 先生にCDを差し出した。
 「このCD、インディーズのやつだからもう発売されてないんです。よかったら、どうぞ。」

 「ありがとう。でも、そんな貴重なもの貰えないよ。気持ちだけで十分。」
 ヒロコ先生は、少し驚いた顔をしたあと、また微笑んだ。
 「で、でも……。」
 差し出したCDの持って行き場がない。

 「じゃあ、ひとつお願い。」
 ヒロコ先生が、僕の目をしっかりと見つめながら言う。
 「もし、今後このCDを欲しいって言う人が現れたら、譲ってあげてほしいの。」
 そんな。
 僕は、先生だからあげたいと思ったのに。
 「ただね、もしもその人と対等な関係でいたかったら、ちゃんと対価は受け取って。今は訳が分からないかもしれないけど、後々、絶対そのほうがいいから。」
 ヒロコ先生の真剣な目に圧倒されていると、先生が降りるバス停に到着した。

 先生はいつもの笑顔に戻ると、「じゃあね」と言って降りていった。

 そういえば。 
 あの日、僕がシンタロウのクイズを解いた日から、シンタロウやリュウスケは僕に少し優しくなった気がする。
 この間ヒロコ先生と一緒のバスになった時に読んでいたクイズの本に、シンタロウのクイズが載っていた。
 ヒロコ先生が面白い、といってくれたクイズだ。

 流行っているのかな。

 CDを鞄に戻して、バスを降りた。

   ******

 ムカイが講師控室に戻ると、ヒロコ先生と神谷が話していた。

 「すごいね、どうして分かったの?」
 「いや、ちょっと考えたら分かるでしょ」
 神谷がムスッとした顔で答えている。
 「自分で考えたの?」
 「あたりまえじゃん」
 ヒロコ先生は、小さく微笑んだ。
 「いいから、教えてよ。先生、いくつ?」

 「今度の土曜で、22歳。」
 ヒロコ先生は少し間をおいてから答えた。
 あれ。彼女、大学2年って言ってなかったっけ。

 「来週、誕生日なの?」
 神谷が尋ねる。
 少しは敬語使えよ。
 「まあ、ね。」

 彼女が、俺の方をちらりと見た気がする。
 すぐに目は逸らされた。
 気のせいか。

 その後も二人で話をしていたが、帰る準備が整ったので、俺は先に部屋を出た。






banner.gif
面白いと思ったら押してくださいね




関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 赤い鬼と青い鳥
もくじ  3kaku_s_L.png 眠りの森の天使
もくじ  3kaku_s_L.png 人魚の王子様
【あひるの子はみにくい 17話】へ  

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【あひるの子はみにくい 17話】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。