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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 17話

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 「今日ね、お隣さんが挨拶にみえたの」
 夕飯を食べるムカイに、妻が話しかける。
 今俺たちが住んでいるマンションの隣は、長らく空き家だったはずだ。
 「へぇ、どんな人?」
 あまり興味がない話題だが、精一杯興味があるふりをして答えた。
 「それがね、とってもキレイな人なの。大学生っていってたけど、この辺に大学ってないわよね。それに大学生がこの時期に引っ越しってのも変な話だし……。やっぱあれかな、あれだけキレイな人だとストーカーから逃げてきたりしたのかな。ほら、私たちだって……」
 妻は、言ってからしまった、という顔をした。
 俺たちも、このマンションに逃げてきたのだ。

 あの自殺未遂さわぎの後、俺だけではなく、家族にまで非難が飛んできた。
 教師失格、人殺し。
 俺を罵るため、ひっきりなしに電話が鳴った。

 妻も、表立って非難されることはなかったが、近所の主婦友達から腫れものに触るような扱いを受けてきたらしい。

 そして俺たちは、このマンションに引っ越してきた。
 ここは新しくできた隣の高層マンションの影になっているせいで、日照時間か短く、門戸の半分くらいが空き家になっている。

 もともと人づきあいが苦手であった妻にとっては、ここの方が落ち着くらしい。

 「そうかもな。そういえば、あの塾にもキレイな女子大生が臨時講師で入ってきたぞ。」

 あまり好ましい話題ではなかったので、彼女の話をふることにした。

 「そうなんだ。でもそんなにキレイな人だったら生徒さん達、勉強どころじゃなくなるんじゃない?」
 「いや、そうでもないよ。男子だけじゃなくて、意外に女子もちゃんと話聞いてたみたいだし。」
 「じゃあ、その女の人本当にキレイなんだね」
 「なんで?」
 「だって、女の子もその人に憧れちゃってるワケでしょ。思春期の女の子ってね、中途半端な美人には反感を持つけど、本当の美人には憧れるようにできてるのよ」

 そういうもんか、と思ってポケットから煙草を出した。

 「あ、吸うなら」
 「はいはい、ベランダで吸いますよ」

 ベランダに出て、煙草を一服。

 息子のノブヒロは、このマンションに引っ越してくる少し前あたりから、全身のアトピーに悩まされるようになった。
ひどい時には、一日じゅう体をかきむしっていたりする。
 幼稚園でも他の子たちから距離を置かれているらしく、妻はあらゆる民間療法を試している。
 煙草がアトピーによくない、という話をどこからか聞いてからは、部屋の中で吸わせて貰えなくなった。

 息子の赤く爛れた皮膚を見るたびに、俺は自殺未遂の彼女を思い出した。
 罰があたったんじゃないだろうか。
 そう思う日もあった。
 妻も同じだっただろうと思う。

   ******

 マサオは塾から帰るためにバスに乗り、一番後ろの席に座っていた。
 本を読んでいるが、頭の中は別のことを考えていた。

 シンタロウのこと。

 彼が僕をいじって笑いを取るのは、いつものことだ。
 ただ、今日はトクベツに恥ずかしかった。
 新しい古文の先生、とってもキレイな人なんだけど、その人の前でも僕のことを笑いのネタにしたからだ。

 ヤメてくれ、とは言えない。
 僕は本当に気が小さいんだ。
 
 ふわ、っといい香りがした。
 隣に女の人が座ったんだと分かった。

 「笠原くんも、このバスなんだね。」

 急に自分の名前を呼ばれてびっくりして、僕は顔をあげた。
 隣には、その新しい古文の先生、ヒロコ先生が座っている。

 「あ、そ、そうです」
 ヒロコ先生はクス、と笑って「どこまで?」と聞いた。
 僕が降りる予定のバス停を言うと、じゃあ私のひとつ先だね、と答えた。

 「なに読んでるの?」
 先生が僕の手元の本を覗き込んだ。
 恥ずかしくて隠そうとしたけど、隠しきれなかった。
 先生は近くで見てもやっぱりキレイで、おまけにいい匂いがして、ドキドキした。

 「これとか、面白いね。」
 先生が本をパラパラとめくって、一つのページを指さした。
 僕も大好きなページだ。
 「はい、面白いです。」

 たわいもない話をしていると、先生が下りるバス停がやってきて、「じゃあ、また来週ね」といって席を立った。
 先生がいなくなった後もドキドキして、あやうく乗り過ごすところだった。

   ******

 「なあ、先生って何歳?」
 神谷シンタロウは、質問があると言って講師控室にやってきた。

 「なんでそんなこと聞くの?」
 新しく古文の担当になったヒロコ先生はにっこり笑って答えた。
 結構、いや、とてもキレイな先生だ。
 大学生とか言っていたから、オレとあまり年も変わらないはずだけど、同級生とははっきり違って、大人のヨユーが感じられる。

 「知りたいから。いいじゃん、教えてよ」
 この先生は、一体いくつなんだろう。

 ヒロコ先生は、小さく笑って、「内緒。」と答えた。

 「女性に年を聞くなんて失礼だぞ」
 奥に座るサエキ先生が注意してきた。
 うるせーよじじい、心の中で毒づいた。

 「じゃあね、問題。これに答えられたら、年齢教えてあげる。」
 「お、まじで?」
 悪いけど、オレがこの塾で一番成績いいんだ。

 「ある男の人が、病院を訪ねました。『頭を押さえると、割れるように痛むんです。』医者にこう訴えました。医者は彼の頭を触ってみましたが、『今は平気』と答えます。医者は脳の検査もしてみましたが、異常はみつかりません。ただ、驚くことに、『頭だけじゃなくて、胸も、左ひじも、腰も、右ひざも、左かかとも、触るだけでものすごく痛いんです。』と男は言いました。さて、男の病気はなんだったでしょう?」

 「え、何それ」
 古文の問題かと思っていたので、あっけにとられた。
 「だから問題だって。これが解けるまで、勉強に関係ない質問は禁止ね。」
 ヒロコ先生は片目をつむった。
 「さあ、もうすぐ授業だよ。行こ。」
 先生に背中を押されて、オレは講師控室を出た。





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