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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 16話

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 「やっぱり、キレイな人は免許証の写真もキレイなんだなあ」
 サエキ先生が彼女の免許証のコピーを持ち上げながら言った。
 「ムカイ先生も、ほら」

 サエキ先生に手渡された紙を見た。

 彼女の名前は富士野ヒロコ。
 つい最近この塾で臨時講師として働くことになった大学生。
 なるほど、どんな人でも悪人風に写ってしまうと思っていた免許証の写真だが、彼女はとても美人であることが分かる。

 女優の○○に似ているとか、いやいやアイドルグループの○○だとか、皆が口々に言い合っていたが、俺にはもっと似ている人を見たことがある気がする。
 誰だったか、思い出せないが。

 「彼女、初日はどうだったんですか。授業」
 サエキ先生に免許証のコピーを返しながら尋ねた。
 「いやあ、チラッと覗きにいったらさ、すごい上手なんだよ。ガキたちも真剣に聞いてるしさ。やっぱ美人は得だねー。」
 サエキ先生がデレデレしながら答える。
 覗きに行ったのも下心が八割だろうな、なんて考えていた。

 「こんにちは、今日もよろしくお願いします」
 噂をすれば―。
 
 彼女が出勤してきた。

 「今日もよろしくね、ヒロコ先生」
 一番に答えたのはやっぱりサエキ先生だ。
 いつの間にか下の名前で呼んでいる。

 「ムカイ先生、今日もよろしくお願いします」
 彼女が机の上にバッグを置きながら言った。
 俺の隣りの机、この間までオノデラ先生のものだった机だ。
 「よろしくお願いします。富士野先生」
 義務的に挨拶を交わす。
 あの事件が合ってから、人と深くかかわるのが億劫だ。

 「お子さん、ですか?」
 彼女が俺の机の上の、写真立てをみて言う。
 俺と妻と、今年6歳になる息子のノブヒロが写っている。
 「ああ、まあね」
 彼女は微笑んで、「かわいい」と言った。
 なんだか、複雑な気分だ。

 「初日、授業うまくいったみたいですね。」
 「そんな、私緊張しっぱなしで。自分で何言ってるのか分からなくなってた所もあったし……。」
 「いや、サエキ先生は褒めてましたよ。すごく上手だったって」
 そう言うと、彼女の表情が少しだけ曇った。

 「私、サエキ先生が少しだけ苦手で。」
 ふいに彼女が顔を近づけると、俺にだけ聞こえるような小声で言った。

 困惑していると、悪戯っぽい顔で笑った。
 「今度、相談に乗ってもらってもいいですか?」
 自分の顔が熱い。
 「そうだね、また今度」

 彼女はにっこりと微笑んで、今日の授業の準備を始めた。
 俺も授業の準備に戻った。

    ******

 「いいかー。元素記号ってのはなあ、横に覚えちゃだめだ。すいへーりーべ、じゃないぞ。この縦の列。これが大事だ。縦の列の元素同士はお互い性質が似てるからなー。まず第一族からー。‘エッチでリッチなナナコさん、ルビーせしめてフランスへ’だ。覚えたかー?」

 今日は高校1年生の化学。元素記号の授業だ。

 「せんせー、しつもーん」
 生徒の一人、シンタロウが手を挙げる。
 「えっちでりっちなナナコさんってどんな人ですかー?具体的に教えてくださーい」
 教室の何箇所かで小さな笑いが起こる。

 神谷シンタロウは、20人足らずのこのクラスのリーダー格だ。
 子供たちは、どんなに小さな環境だって、徒党を組み、派閥を作り、順列を決める。
 彼はその順列のトップにいる。
 明るくて、ムードメーカーで、成績はトップクラスで、適度に残酷だ。
 
 「それはな、大学に行ったら分かると思うぞー。」
 「うっそマジで?大学はエッチなナナコさんばっかりなんだってよ。マサ、ちゃんとメモっとけよ」
 俺の言葉に、シンタロウがさらにヒートアップする。
 適当にいなしたつもりだったが、話が脱線したまま元に戻らない。

 話を振られたマサ、こと笠原マサオは顔を真っ赤にしてうつむいて、もともと野暮ったい印象をさらにもっさりと見せている。

 大きめに咳払いをしたあと、強引に授業に戻した。
 「はーい、じゃあ第二族。‘ベッドに潜って軽くさすればばら色’だー。いいかー?」

 あちこちで小さくクスクス、と笑っている。
 
 「おいマサ、どこをさするんだよ?」
 シンタロウはまたマサオに話しかける。

 「どこだっていいだろ?」
 マサオが反論しようとするが、「ドコ」の部分で声が裏返ってしまったので、余計に笑いを誘った。

 「はいはい、授業続けるぞー。」
 パンパン、と2回手を叩いて、こちらに注意を戻す。
 「じゃあ次、第三族―。」

 後ろを向いた俺の背中を、マサオが睨んでいたことに、俺は気がつかなかった。





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