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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 15話

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 「ムカイ先生、ホームページに載せる講師紹介だけど、やっぱり全部平仮名がいいのかな?」
 向かいの机から、同僚のサエキ先生が話しかけてきた。
 「はい、それでお願いします。柔らかい感じがでればと思って」
 そういってからテストの採点に戻った。
 「ふうん、そんなもんかね」

 サエキ先生は、俺よりも8つも年下だが、この学習塾の副学長。
 俺の上司だ。

   ******
 
 例の自殺騒ぎの後、「いじめを見て見ぬふりをしたダメ教師」というレッテルを貼られ、なかば強引に依願退職という形を取らされた。

 ふざけるな、お前らだっていじめのことは知っていただろうが。
 もしお前らがあのクラスの担任だったら、あれを解決できたとでも言うのか。

 不満でいっぱいだったが、仕方がない。
 以前から学習塾の講師をしないかという引き抜き話もあったことだし、退職を受け入れた。
 しかし、引き抜き話はあっという間に立ち消えた。
 理由はもちろん、あのウェブサイトだ。
 いじめグループの中に、担任の俺のフルネームが載っている。

 俺を雇うだけで塾の評判が下がると判断され、俺は職を失った。

 その後、いくつかの私立高校や学習塾を当たってみたが、なんとか潜りこめても数週間であのウェブサイトが見つかってしまい、クビになる。
 いまどきの生徒たちは、とりあえず検索してみるのが好きらしい。
 
 かといって身分を偽るわけにもいかないので、この学習塾に雇ってもらってからは、全て平仮名で通してきた。
 平仮名で検索しても例のウェブサイトに当たらないことは確認済みだ。

    ******

 「ムカイ先生、知ってる?オノデラ先生ね、駅の階段で転んで両腕と右足骨折だって。」
 サエキ先生が、パソコンに何か入力しながら話しかけてくる。
 初耳だ。

 「え、大丈夫なんですか?」
 「いやー、大丈夫じゃないみたいよ。意識不明とか面会謝絶とかじゃないんだけどさ。あれ当分、授業できないよね」
 サエキ先生は軽く言っているが、大ごとだ。
 「どこの病院に入院してるんですかね。お見舞いに行かないと」
 「あ、それなら午前中に俺と学長とで言ってきた。昨日の夜、飲み屋の帰りだったそうだよ。誰かにぶつかって落ちた、とか言ってたけどさ。発見してくれた駅員さんの話だとそばには誰もいなかったらしいし。相当酔っぱらってたんだろうねえ。」

 この塾の講師には、大きく分けて三種類いる。
 一つ目は、正規の講師。いわゆる正社員みたいなもので、学長の息子であるサエキ先生と、あと一握りの人気講師がそうだ。
 二つ目は、特任講師。いわゆる契約だ。学期ごと、もしくは年ごとの更新で、次も働けるかどうかが決まる。学期の終わりには毎回、生徒たちにアンケートが配られる。授業がわかりやすかったか。難易度は適切だったか。来年もこの授業を受けたいと思うか。このアンケートが更新の重要な資料となるため、生徒の人気取りに必死だ。この塾の講師の半分以上は特任講師で、オノデラ先生も俺もこれにあたる。
 三つ目は臨時講師。1コマいくらのアルバイトだ。ほとんどが大学生で、生活なんてかかってないので、お気楽なものだ。
この三つは、決して交り合わない。

 「困ったよねえ、もうすぐ夏期講習始まるっていうのに。ああ、古文・漢文どうしよう。ムカイ先生、できる?」
 「いやあ、私は数学担当なんで……。」
 無理にきまってるだろう。
 「無理だよねえ。アルバイトさんも手一杯だし。」
 サエキ先生は大げさにため息をついた。
 「募集、かけなきゃだめかなあ。この時期、いい人いるだろうか」

 いいタイミングで授業開始のチャイムが鳴ったので、席を立った。
 「すみません、いってきます」
 サエキ先生は、こちらを見ることもなく「んー。」と答えた。

 おそらく、オノデラ先生はもう戻ってきても席はないだろう。
 この塾は、講師を使い捨ての道具だと思っている。

 ここに来てから、絶対にひっくり返らないヒエラルキーを感じる。
 きっと自殺した彼女は、ヒエラルキーの最下層にいたのだ。
 そりゃあ死にたくもなるよな。
 
 自分の頬を軽く叩いて、しっかりと笑顔を作ってから、高校2年生クラスの扉を開けた。

    ******

 翌日、俺が講師控え室に入ると、サエキ先生が隅の応接スペースで、若い女性と話をしていた。
 「ふうん、文学部1年生なんだ。お、すげえ、結構いい大学じゃん。」
 サエキ先生が履歴書を持ち上げる。
 どうやら、オノデラ先生の代わりらしい。
 「いえ、そんなことないです」
 女性が軽く笑いながら答える。
 鼻の下を伸ばしたサエキ先生をみて、きっと美人なんだろうな、と思った。
 俺の席からは、彼女の後姿しか見えない。
 「さっき解いてもらった試験もほぼ満点だし。学力は問題なさそうだね。人に教えるのとかは、得意?」
 「はい、高校時代から友達に教えたりはよくしていましたので」
 
 二人の方を眺めていると、サエキ先生と目があった。

 「あ、ムカイ先生。こちらね、富士野ヒロコさん。夏期講習から古文とかの担当してもらおうと思って。」
 サエキ先生に促されて立ちあがった彼女は、俺の方を向いて深く頭を下げた。
 「富士野です。よろしくお願いします。」
 顔を挙げた彼女は、息をのむほど美しかった。





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