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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 13話

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 ユウコが部室の扉を開けると、あの女は座って待っていた。

 「ヒロコさん」
 その偽名で呼ばれるのも、もう慣れた。
 若干蒸し暑い日だったが、彼女は汗一つかいていない。

 「どういうつもり?」
 どういうつもりで、私の彼に手をだしたりするのか。
 どういうつもりで、私をバカにするのか。

 しかし、彼女からは反論がない。
 「どういうつもりって……なにがでしょうか」
 彼女は、怯えたような顔で私を見ている。

 「彼に、メールしない方がいい、ってあなた言ったよね。それって、こういうことだったの?私から、タクを奪いたかったわけ?」
 堰を切った私の言葉は、とまらない。
 対して、電話では饒舌だった彼女は、面と向かうと上手く言葉が出ないようだ。
 「私……、私、そんなこと言ってません。」
 小さな声で彼女が言う。
 「私は、ヒロコさんの彼を奪ったり、してません」

 あいかわらず、うつむいたまま喋る彼女に、とても腹が立った。
 「本当のこと言いなさいよ!」

 おもわず振り上げた私の右手が、急に動かなくなった。
 誰かに手首を掴まれたからだ、と理解するのには少し時間が必要だった。

 「ミキさん……。」
 振り返ると、3年の先輩の、ミキが立っている。
 いや、彼女だけじゃない。ぞろぞろと、サークルのメンバーが部屋に入ってきた。

 「何してるの」
 ミキさんに言われて、アサコが「いや、あの……」と、しどろもどろになる。

 「あの」
 私の右手が、ミキさんに掴まれたままであったので、おそるおそる言った。
 右手首が解放されたとおもったら、今度は左頬に衝撃がきた。
 「痛っ」
 ミキさんに頬を張られたのだ。

 アサコに注がれていると思った皆の非難の目は、私に向けられている。

 「全部聞いたわよ。アサコちゃんから」
 ミキさんが無表情で言う。
 「聞いたって、何を……」

 「あなた、アサコちゃんに彼氏を取られたって思いこんで、彼女にいろんな嫌がらせをしてきたんだってね。悪戯電話だったり、郵便物を盗んでみたり。こないだのサークル旅行の会計報告だって、無理やり彼女に押しつけたんでしょう?しかも会計が合わない分、アサコちゃんに出させたって言うじゃない。信じられないわ」

 「いや、私、そんなこと」
 混乱して、うまく言葉が出ない。

 「てか、あんな男、アサコが狙うわけないじゃん。」
 後ろにいた別の先輩が、追い打ちをかける。
 そうよね、あんたとはお似合いだったと思うけど。
 口々に言い合う。

 どうして。
 私は悪いことなんてしてない。
 悪いのは、アサコなのに。

 アサコはうつむいているが、微かに笑っているように見えた。
 「あんた、皆に何言ったの!」
 逆上してアサコに飛びかかろうとしたが、またミキさんたちに押さえられた。

 彼女は、皆に守られて、一番後ろで怯えながら私を嘲笑う。

 「これ、サークル旅行で買ったんだよね。」
 そう言ってミキさんは私の耳を触った。
 私の耳に嵌っているのは、あの時に買ったガラスのピアスだ。

 「だったら、何なんですか」
 涙が込み上げてきた。
 どうして、こんなことに。

 「これ、アサコちゃんが見つけたんだって。」
 そう言ってミキさんが突きつけてきたのは、あのガラス工房のレシート。

 ピアスのほか、ワイングラスなど、総額28000円。

 「これ、旅行の会計の不足分とぴったり一致するよね。足りなくなるわけだ。皆から集めたお金で好き勝手に買い物してるんだもんね。」

 いつか、アサコが『これ、買ったんです』とワイングラスを持ち上げたのを思い出した。

 「違います。それは、アサコが……。」
 私の反論は、誰にも聞き入れられなかった。
 ここで泣いたらだめだ-
 そう思っているのに、涙が止まらない。
 私の涙を、皆が肯定の涙と解釈している。

 「あんたがやったこと、横領だから。悪いけど、サークルは辞めてもらう。本当は、大学も辞めてもらいたいくらいだけど。」
 ミキさんが言い放って、皆を引きつれて出て行った。
 アサコも、泣きながら皆の後ろをついていく。

 目の前が真っ暗になった。

    ******

 私がアパートに帰ると、引っ越しのトラックが止まっていた。
 私の隣の部屋、つまりアサコの部屋から、段ボール箱が次々と運び出される。

 「あら、ヒロコさん」

 彼女が顔を出した。
 さっきの泣き顔が嘘のように、さわやかな笑顔を浮かべている。

 「どうして」
 
 それしか言えない私を見て、彼女は小さく息を吐いた。
 「どうして私がこんな目に-って?」
 彼女の大きな目が私をしっかりと見据えている。

 「私も高校時代、ずっとそう思ってたわよ。ユウコちゃん。」

 懐かしいその呼び名。
 ずっと、その声に聞き覚えがあると思っていた。

 「マヒル、ちゃん」
 目の前の美しい女は、高校時代ブスと罵られ続けた彼女だ。

 「私のこと、思い出したら、途中で止めてあげてもよかった。全部なかったことにして、新しい人生を歩きたいと思うのは構わない。でも、私のこと、忘れるのは許せない。」
 膝に力が入らず、扉の前でしゃがみこんだ。

 「私は謝らないわ。さよなら」
 そういって彼女は私の横を通り過ぎた。

 引っ越しのアルバイトだろう若い男の子が、泣いている私を見ないようにして荷物を運び続けた。




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