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赤い鬼と青い鳥

赤い鬼と青い鳥 3話

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 そこから1週間、あわただしい日々が続いた。
 何しろ、仕事関係の関係者と言っても、ほぼその顔と名前が一致しないのだ。周りに調子を合わせ、挨拶をするにも一苦労だった。ただ、ピアノに向った時は、すらすらと指が動くのには驚いた。記憶の中で、最後にピアノを弾いたのは10年以上前だというのに。
 ピアノの仕事と結婚式の準備をこなし、へとへとに疲れているはずなのに、まったく嫌ではなかった。こんなに幸せな疲れ方をしたのは、生まれて初めてだ。

 婚約者が帰国する日が翌日となったが、あいかわらず、チルチルは私に懐かなかった。

   ******

 婚約者が帰国する日、私は思い切って手料理をふるまおうと材料を買い込み、キッチンに向かったものの、まったく思ったように進まなかった。シチューは味が濃すぎるし、ハンバーグは何度も焦げ付かせ、挙句の果てにサラダをつくろうにも野菜の切り口が全くそろわず、見た目に全然おいしそうに見えない。自分でも呆れかえった。
 料理はそれなりに上手であったはずなのに。
 これは、スキルを振り替えた弊害だろうか。

 しかたがないので夕飯は外食とすることにし、空港へと向かった。
 到着予定は17時だ。あれから何度かメールのやり取りをしたが、迎えにいくことは伝えていない。驚かせるつもりだった。

 空港につくと、もう婚約者が乗った便は到着しているようだ。その姿をさがすものの、人が多すぎてなかなか見つけられない。
 すると、意外な人物が目に入った。
 「ルカちゃん……」
 どうしてあの子がここにいるんだろう。そう思っていると、妹の顔がパッと明るくなり、男の人に向かって駆けだした。妹に向かって笑顔で手を振るその男は、私の婚約者だった。

 どうして、あの二人が会っているの。

 私は、妹にも婚約者にも声をかけることができず、そのまま家に帰った。

 呆然とする私に向かい、チルチルは威嚇の声をあげる。
 携帯電話が鳴り、手に取ると婚約者からだった。
 話があるという。嫌な予感しかしなかった。

 指定されたレストランに向かうと、彼の横に妹が座っている。
 「やあ、久しぶりだね。夕飯はまだなんだろ?適当に頼んでいるけど、それでいいかな?」
 どうしてルカちゃんがここにいるの、そう聞きたかったが、これを聞いてしまうと全てが台無しになりそうで、黙っていた。
 「いいわ、ここの料理はなんでも美味しいもの」
 妹は、ぎこちない笑顔をこちらに向けてきたが、何かを言うことはなかった。

 食事の途中、彼が何かを言いだそうとする瞬間が何度もあった。
 私はその都度、それを意味のない話で遮っていたが、限度があったようだ。

 「話があるんだ」

 彼は、まっすぐこちらを見ている。
 「そういえば、結婚式の招待者リストに-」
 「ごまかさないで聞いてくれ」
 私は話をそらそうとしたが、彼の意思は固いようだ。こちらも覚悟をきめた。
 「話ってなに?今日の空港で二人が会ってたのは知ってるわよ」
 彼は少し驚いた顔になったが、すぐに元の顔に戻った。

 ウェイターが、メインの肉料理を運んできた。
 ナイフとフォークを手に取った。
 「妊娠してるんだ。」
 今度はこちらが驚く番だった。
 いったい誰が。そんなことはこの状況を見れば一目瞭然なのだが、確認しないわけにはいかなかった。
 「ルカちゃん。いま二か月だそうだ。僕の子だ。」
 ナイフを持つ手に力が入る。
 そういえば、妹がこの日まったくお酒を飲んでいなかったことに初めてきがついた。
 「そう。それでどうするの?結婚式」
 「どうするのって、中止にするしかないだろう」
 「開き直らないで。中止にするなんて簡単なことじゃないのよ」
 「じゃあどうしろって言うんだ。このまま式をあげるわけにはいかないだろう」
 この男はいったい何を言っているのだ。
 「あなたはどうしたいの?」
 「こうなったからにはきちんと責任を取りたいと思っている」
 この男は私の恋人になったのではなかったのか。
 「責任って。それは私に対して?それともルカちゃんに対して?」

 言ってから、しまったと思った。ここで妹に話を振ってしまうと私の負けだ。小さいころから何度も経験しているので知っている。そしておそらく、彼女もそのことを知っている。
 「お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんの彼氏だってことはわかってた。でもどうしても彼のことが好きだったの。お姉ちゃんとトオルさんが付き合い始める前からずっと彼のことが好きだった……」
 最後は涙交じりだった。目元をハンカチで押えているため本当に涙が出ているかどうかの判別はできない。
 「君には本当に申し訳ないと思っている。しかし彼女は一人では生きていけないんだ。誰かがついていてやらないと。君は僕がいなくても生きていけるよ。」

 ほら、負けた。

 妹はいつもそうだった。
 私の持ち物で欲しいものがあると、どんな手を使っても手に入れてきた。
 一人では生きていけないだって?彼女はそうじゃない。彼女みたいな人間こそ、一人で生きていけるのだ。どうしてそれがわからないのか。
 それに、一人で生きていけるとかいけないとか、問題はそこじゃない。結婚式の直前で反故にするなど、許されていいわけがない。
 
 しかし、言い返すだけ無駄だと思えた。

 「わかった。好きにするといい。結婚式の中止の手続きはすべてあなたがやって。それから、あなたたちの結婚式には出席させてもらうわよ。当然でしょ?親族なんだから」
 かつての婚約者は、安堵の表情を浮かべていたが、妹は困惑していた。どうやったら姉を結婚式に呼ばずにいれるか、考えているに違いない。

 「じゃあ、お先に失礼するわ。さよなら」
 席をたつと、ウェイターがデザートを運んでくるところだった。大体どんな話をしていたか、聞かれていたのだろう。すぐに私から目をそらし、かるく会釈をしてきた。シャーベットの盛り付けが嫌味に思えた。

 レストランを出て足早に歩いていると、後ろから妹が追いかけてきた。
 「お姉ちゃん、待って」
 どうやら彼は一緒ではないらしい。
 「なに?もう話は終わったと思うけど」
 「お姉ちゃん、本当にごめんなさい。私、こんなつもりじゃなかった」
 「もういいわ。お幸せに」
 どういうつもりだったというの。
 「待って!」
 妹は、ひときわ大きな声を出した。
 「なによ、まだ何かあるの?」
 「結婚式には出ないで。ママたちにも言わないで」
 「は?」
 結婚式に出る出ないはともかく、父親も母親も私が結婚するはずだった相手のことは知っている。言わないなんて無理にきまっている。
 
 「お姉ちゃん、自分だけが被害者みたいな顔しないでよ。先に彼をとったのはお姉ちゃんでしょ」
 
 どきりとした。
 やり直しのことを、妹は知らないはずなのに。
 
 「私が彼のこと好きなの知ってたくせに。知ってて彼と付き合い始めるなんてひどい。あのときの優越感にひたったお姉ちゃんの顔、私一生忘れない。お姉ちゃんが先に彼のことをとったんじゃない。お姉ちゃんばっかり私のこと責めるなんておかしいよ」

 ああ、そういうことね。

 でもそれは違う。私が彼と付き合い始めた時、妹は彼と付き合っていたわけじゃない。だから、取ったとか取らないとか、妹に文句を言われる筋合いはない。
 「離してよ。行きたいところがあるの」
 妹の手を振り払って歩き始めた。後ろで妹が泣いているのがわかる。泣きたいのはこっちのほうだ。
 これで幸せになれたと思ったのに。

 家に帰り、ドレッサーの引き出しから宝石を1つ取りだした。
 チルチルは、私が近づくとまた騒ぎ出していたが、気にしてはいられなかった。

 あの教会へ、行かなければ。





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