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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 9話

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 大学2年になったユウコは、サークルの部室で電卓を叩いていた。

 登山とテニスとボランティアをすることになっているサークルだが、実際のところ飲み会と旅行しかしていない。恋人のタクもこのサークルに入っている。
 ユウコは、このサークルの会計を任されており、この間の旅行の収支を、領収書を纏めながら計算していた。
 どうしても28320円、合わない。
 3年の先輩に、お金にとても厳しいミキさん、という人がいて、以前数百円の間違いがあった時にも2時間ちかく小言を言われた。
 そんなに言うなら自分でやればいいのに。
 本来、会計はミキさんの担当のはずだった。

 「お、まだやってんだ」
 タクが部室にくると、半分あきれたような顔で私の横に座った。
 「どうしても28000円計算が合わないんだよねえ。またアイツに嫌味言われるかな。」
 さすがに肩がこったので、立ちあがって大きく背伸びをしながら言った。

 「そんなん、自分の財布からちょっと出しちゃえばいいのに」
 実家から大学に通っていて、奨学金も借りていない彼とは、ときどき金銭感覚の違いを感じる。
 「やだよ、バイト代が入るのまだ先なのに」
 「ふぅん」
 彼は気のない返事をしてから、部屋の中をぐるっと見回した。
 出せば、とは言うクセに俺が出してやるよ、とは言ってくれなかったのが少しさみしい。

 「なあ、早くしないとホーリー・ホック予約の時間に間に合わないぞ」
 時計を見上げると、5時半だった。
 「うそ、もうこんな時間」
 このあと、二人で少しだけ高いディナーに行く約束をしていた。
 ホーリー・ホックはちょっと離れたところにあるレストラン。

 付き合って半年記念。渋る彼にさんざん文句を言ってきたのは私だ。
 もうすぐにでも出発したい。

 諦めようかな-。
 そう思った時、部室のドアが開いた。

 「あ、ヒロコさん。おつかれさまです」
 入ってきたのは、1年のアサコだった。私の隣人。

 「なあ、こいつったらまだこの間の旅行の領収書計算してんだぜ」
 私より先に彼が口を開いた。
 「あら。計算、合わないんですか?」
 彼女が小さく首を傾ける。
 
 彼女はとてもキレイだ。

 サークルにアサコが入ってきた時は、男どもはみんな色めきだったし、女たちはみんな委縮した。
 何人かが彼女にアプローチしては玉砕した、という噂を耳にしたが、彼女自身はどこ吹く風だ。
 最初は女たちから敬遠されがちだった彼女だが、しばらくすると皆と打ち解けていった。

 ひょっとしたら女が好きなんじゃないの、そんな噂を聞いたこともある。

 「そうなんだよ、これからホーリー・ホック予約してんのにさあ」
 また彼が口をはさんだ。

 「大変ですね」
 彼女が、じっとタクの目を見ながら言った。
 たっぷり5秒ぐらい見つめた後、私の方に向き直った。

 「あの、もしよかったら、やっておきましょうか?計算」
 彼女の大きな瞳が、今度は私を見つめる。
 どうしても、目をそらしてしまう。

 「え、いや、いいよ、本当に。明日やるし。」
 私は、彼女の前だとつい卑屈な気分になってしまう。
 それが僻みであることは自分でもよく分かっていた。

 「いいですよ、やります」
 彼女が小さくほほ笑む。
 「明日、ミキさんのチェック、入るんでしょ。今日中にやっといた方がいいですよ」
 
 「いやいや、アサコちゃんの仕事じゃないって。コイツにやらせとけばいいんだよ」
 またもや彼が横やりをいれる。
 なんでアナタが言うの、そう思った。
 
 「もう、そんな言い方。ヒロコさん、かわいそうじゃないですか。」
 かわいそう?
 「ヒロコさん、いつもお世話になってるお礼。こんなときくらい甘えてくださいよ」
 そういって、私の手から領収書の束を取り上げた。
 「あ」
 「いいからいいから。予約、してるんでしょ?早く行ってください」

 タクが彼女の顔をずっと見ていることに気がついて、少しむっとした。
 「じゃあ、おねがい。今度ちゃんとお礼はするから」
 そういうと、彼女は「はーい」と笑った。
 「タク、行くよ。遅れちゃう」
 
 予約の時間にはなんとか間に合ったが、ちっとも楽しくなかった。
 食事の間ずっと、仕事をアサコに押しつけた、と彼に責められていたからだ。

 
 翌日、アサコは1円のズレもない会計報告書を渡してきた。
 「あれ、どうして」 
 何度計算しても合わなかったのに。
 彼女は私の質問には答えず、口角をきゅ、と持ち上げた。
 
 キレイだ、と思った。



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