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あひるの子はみにくい

あひるの子はみにくい 1話

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 びゅう、と背中に強い風を感じた。
 思わず手で後ろのフェンスを掴んでしまった。
 しまった、と思った。
 今の風に押されて、落ちたらよかった。

 足元をみると、高校の見慣れた玄関がある。
 屋上から見下ろすと、なんだか変な感じ。
 空がうっすらと色づき始めている。もうすぐ夜が明ける。

 死のう、と思ったのはいつからだろう。
 きっと「いつ」という明確な答えはない。
 私の学校での生活は、少しずつ私の未来への希望をそぎ落として行った。

 「私は、いじめられています。」

 そう言えたらどんなに楽だろう。
 
 私はクラスの中に存在せず、にも関わらず後ろから嘲笑が聞こえる。振りかえると、やはり誰とも目が合わない。私は存在しないから。私の持ち物は、すぐにどこかに消えてなくなる。私は存在しないのだから、私の持ち物は持ち主不明の不審物なのだ。ペンや教科書に始まり、制服や椅子など、さまざまなものが私の前から消えていった。そのたびに私は探し回る。一番にゴミ箱。二番にトイレ。
 
 私は、1年前までは存在していた。存在が認められていたのだ、友達のユウコちゃんに。1年前、ユウコちゃんは私の片思いの相手をクラス中にばらした。その相手は、なんで俺があんなブスに好かれなきゃなんないんだ、と言った。その日から、ユウコちゃんも私を見て見ぬふりを始めた。私は存在しなくなった。
 ユウコちゃんは、私をいじめているグループのリーダー、リホちゃんに取り入りたいみたいだ。でも、リホちゃんは私をいじめるときにしかユウコちゃんと話さない。いいように使われている。みんな気付いている。私も、リホちゃんも、リホちゃんのグループの人も、そうじゃない人も、ユウコちゃん以外は、みんな。
 
 昨日は、私のお弁当をトイレに捨てられた。昼食が食べられなくなることより、毎朝お弁当を持たせてくれる母親に申し訳なくて、トイレの前で泣いた。弁当箱は持って帰らないといけない。母親に心配はかけたくない。便器の中から弁当箱を取り出した。後ろからは、相変わらず嘲笑が聞こえる。中身は全てトイレに流して、弁当箱は洗面所で洗った。すると、「邪魔だ」といって、おもいきり蹴飛ばされた。「あれ、私いま何か蹴った?」ととぼけるのも忘れない。私は、きたないトイレの床で頬をすりむいた。
 
 担任のムカイ先生は、いじめが始まった当初は親身になってくれていたが、1カ月、2カ月と経過するにつれどんどん遠くなっていった。きっと、いじめが存在することよりも、自分がいじめを解決できないことのほうが我慢できなかったんだろう。いつからか、彼も私を見ないようになった。私が存在しなければ、いじめも存在しない。
 
 はじめてからかわれたのは、小学校の時。
 「みにくいマヒルの子」
 クラスメートが、そうやってはやし立てた。
 アトピーのせいで顔も腕も肌が汚くて、標準よりも2段階くらい太っている。自分がみにくいことはずっと前から知っていた。その分、愛想はよくしてきたつもりだが、「みにくいマヒルの子」と言われて、私は泣いてしまった。クラスメートたちは、私がいつものようにおどけると思っていたらしい。彼らは私が泣いたことに驚いて、その後で、私のことを嫌いになった。
 マヒルとは、私のこと。井野マヒル、私の名前だ。

 昨日の夜、私は死ぬことを決めた。いや、ずっと前から死ぬことは決めていた。今から死のう、そう決めたのだ。きっかけなんてない。今までの色んなことが積み重なって、死ぬことを考えた瞬間、体が軽くなった。どうやって死のうか、そう考えるのは久しぶりに楽しかった。
 自分がされてきたことを、私はインターネットのホームページに載せた。ホームページを作ったときから、できるだけ写真を撮るようにしていた。ユウコちゃんもリホちゃんもムカイ先生も、みんな実名だ。私が死ぬまえに、いろんな掲示板にそのホームページのアドレスを載せる。そうしたら、きっと大騒ぎだ。彼女たちが就職するとき、結婚する時、自分の名前を検索されて、その本性がバレたらいい。私は私の一生をかけて、彼女たちに復讐する。
 
 私は彼女たちから嫌でも認識される。
 私の存在が認められることとなる。

 昨日、私はたくさんの掲示板にアドレスをばら撒いた。
 後戻りはできない。

 朝日が顔を出した。
 一番に登校してくるのが誰かは知らないが、その前に私は死ななければならない。邪魔されないために。


 よし、10秒後に飛び降りよう。
 
 10、9。
 雨が降ってきた。

 8、7。
 空を見上げた。

 6、5。
 後ろのフェンスをつかんでいた右手に、雨粒があたった。

 4。
 右手を離した。

 3。
 バランスを崩した。

 2。
 待って、まだ2秒あったのに。

 1。
 落ちた。





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それではみなさん、よいお年を。

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