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人魚の王子様

人魚の王子様 6話

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 「ねえねえ、もう一つプレゼントがあるんだ」
 はしゃいで、私を風呂場に連れて行く。

 浴槽に、タコの人形があった。
 いや、違う。
 動いている。

 そのタコは、生きていた。

 ただし、よくテレビなどで見るタコと言うよりは、デフォルメされたキャラクターのタコに近い。そのタコが意思を持って動いている様は、そこだけアニメの世界に入り込んだようで、奇妙だった。

 「なに、これ」
 「わかんない。でも、かわいいでしょ。これだけ、魚屋さん買ってくれなかったんだ。」

 それはそうだろう。確かにタコだろうが、よく知っているタコとはかけ離れている。このタコは頭だけ色が変わっていて、触ると固かった。まるでタコがヘルメットをかぶっているみたいだ、と思った。

 「このタコ、飼ったらだめかな。ちゃんと世話するよ、俺」
 「ちょっと待って、このタコ、飼えるの?そもそも、何食べるのよ」
 「さっきニボシやったら、美味しそうに食べてたよ」

 目の前の奇妙な生物と目があった。私たちの言葉が理解できて、必死に訴えかけているように見えた。
 奇妙な生き物と言えば、この部屋にはすでに半魚人がいる。まあいいか、という気持ちで了承すると、シュウとタコは跳ね上がって喜んだ。やはり、このタコは人間の言葉が理解できるのかもしれない。

   ******

 翌日、会社に行く時もその指輪を着けていった。
 小指を見るたびに、幸せな気分になる。

 「あら、珍しいですね。エリコさんが指輪」
 振り返ると、マヒルが立っている。
 「そうかな」
 最近、彼女をみると無意識に顔がこわばってしまう。
 「ひょっとして、例の彼からのプレゼントですか?」
 「まあ、そうね」
 指輪を、右手で隠した。みられたくない、と思った。
 「かわいい。初恋みたい」
 彼女は、鷹揚に微笑んでいる。

 「私、何かあなたに嫌われることした?」
 一目でブランド物とわかる指輪を着けた彼女に尋ねた。
 彼女は笑顔を最大限に引き出すと、「さあ」と答えて自分のデスクへ戻っていった。

 指輪を外してしまおうかとも思ったが、それでは負けてしまう気がしたので、そのままだ。

 確かに安物だ。
 でも、だからなんだっていうの。

 その日、マヒルの顔はできるだけ見ないようにして仕事を終えた。

   ******

 その日も、彼がご飯を作ってくれた。
 今日はシーフードドリア。
 彼は本当に料理が上手だ。

 その夜ふと目を覚ますと、シュウが風呂でタコの頭をなでていた。
 「どうしたの?」
 彼に声をかけると、こちらを振り返らずに答えた。
 「タコメットに、水槽か何か買ってやらなきゃね」
 その声に、なんとなく彼が泣いていたように思ったのは気のせいだろうか。

 「タコメットって?」
 「こいつの名前。ヘルメットかぶったタコだから、タコメット。」
 何それ、単純。そう私が笑うが、彼はやはりこちらを向いてはくれない。
 「こいつね、とっても仲間思いなんだ。普段はね、2匹か3匹で行動してるんだけど、1匹に危険が及ぶと、どこからともなく仲間が助けにくるんだよ。たとえばすごく強い敵がいて、助けに来たって全滅しちゃいそうって場面でも、絶対助けにくるんだ。で、例えば仲間が何匹も死んじゃったとするでしょ。そしたらね、自分の命を犠牲にしても、仲間を助けるんだよ。」

 そう話す彼が、とても遠く感じる。
 「そのタコのこと、知ってるの?」
 「うん。知ってる。思い出した。向こうの、こっち来る前の所で、会ったことがある。」

 そう。と言って彼の横に座った。やはり彼の目が、赤い。

 「ね、仲間を助けるって、どうするの?」
 私は、極力明るい声を出した。そうしなければ、彼がどこかへ行ってしまいそうだ。
 「ああ。魔法の、踊りがあるんだ。このタコが最後の力を振り絞って魔法の踊りを踊ると、瀕死の仲間が、生き返るんだよ。その代わり、踊ったやつが死んじゃう。」

 「へえ、覚悟の踊りなんだね。」
 「うん。こいつは、すごく優しいやつだ。」
 それきり、彼は喋ってくれなかった。

 「エリコ、明日も仕事なんだろ?早く寝なよ」
 しばらくの沈黙のあと、彼が私の背中を押して、ベッドまで連れて行ってくれた。
 おやすみ、と彼が言った。





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