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人魚の王子様

人魚の王子様 4話

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 「うっそ、それで同棲はじめたの?」
 翌日、会社で同期のクミコに話すと、予想どおりとても驚かれた。
 「うん、まあね」
 もちろん、彼が半魚人であることは話していない。海で溺れたところを助けてくれた彼が、行くところがないと言うので家に泊めてあげた、というだけ。
 「でも、同棲じゃないよ。彼が住むところを見つけるまで、家に置いてあげるってだけ」
 「立派な同棲じゃないのよ。で、どんなの、かっこいいの?」
 「えー、ふつうかなあ」
 そうは言ってみたが、彼は本当にかっこいい。自慢してみたい気持ちもあって、携帯電話で撮った画像をクミコだけに見せた。
 「めちゃくちゃかっこいいじゃん!いいな、私もこんな彼に助けられたいー」

 入社してから今まで、私がこういった浮いた話の中心になることはなかった。羨ましがられるということが快感なのだと、初めて知った。
 その日は、仕事をしていてもずっと、彼のことを考えてしまっていた。

 「あのー、さっきの話、聞こえてきたんですけど」
 仕事もほぼ片付いたので、そろそろ帰ろうかとしていた時、1年後輩のマヒルが話しかけてきた。

 「さっきの話って?」
 「海でイケメンに助けられた、って話」
 中途採用ではいってきた彼女は、年は同じであったがこれまで仕事上の接点もあまりなく、プライベートなことを話したことはほとんどなかった。
 「ああ、聞こえてたの。ごめんなさい、大きな声出して」
 彼女は皆に愛想がよく、仕事もそつなくこなす。顔の各パーツは地味な方だと思うのだが、全体的に上品にまとまっていて、綺麗な人、という印象だ。男性からも女性からも評判がいいのに、なぜか私は彼女を好きになれない。なんとなく、人を見下している感じがする。

 「私にも、彼の写真、見せてもらえませんか?」
 「うん、まあいいけど」
 そう言って携帯電話を彼女の方に差し出すと、彼女の顔が一気に明るくなった。
 「本当にかっこいい彼ですね。私も、あやかりたいなあ」
 なんとなく、彼女の笑顔が作り物に見えてしまう。 
 「そうかな、普通だと思うけど」
 「うそお、エリコさんだってカッコイイと思ってるくせに」
 屈託のない笑顔を向けてくる彼女に、心がざわつく。
 「もう、一緒に暮らしてるんですよね?」
 「うん、そうね。彼、行くところがないって言うから」
 「羨ましい。その人のこと、本当に信頼しきってるんですねえ。」

 「信頼?」
 ざらっとしたものを感じた。
 「だって、会ったばっかりなんでしょう?お金、とられちゃったりとか、よく聞きますもん」

 「まさか、ねえ」
 笑顔をつくったつもりだが、引きつっていない自身はない。
 「やだ、エリコさんの彼がそうだ、なんて言ってませんよ。きっと彼はそんなんじゃないですよ、だってかっこいいもの」

 まったく理由になってない。私が彼女のことをなんとなく気に入らないのと同じように、彼女も私のことをなんとなく気に入らないのだろう。

 「そうね、ちょっと不用心だったかも。じゃあ、おつかれさま。」

 そのまま、まっすぐ家に帰った。
 晩御飯の買い物をしてから帰る予定だったが、彼女の言葉が頭から離れない。

   ******

 「あ、おかえり」
 家に帰ると、シュウが迎えてくれた。
 「早いね、帰るの7時くらいだって言ってなかった?」
 まだ、6時すぎだ。
 「あ、うん。今日は、仕事早く終わってね。」
 彼に気づかれないよう、ほっと胸をなでおろした。

 駅から走ったので、足が痛かった。
 「安心したら、おなか減ってきちゃった。なんか食べに行こうか、ってあれ?なんかいい匂い」
 部屋中、美味しそうな匂いが充満している。
 「あ、まだできてないよ。こんなに早く帰ってくると思わなかったから」
 キッチンに行くと、シュウがフライパンで何かを作ってくれていた。

 「パエリアだよ。美味しいよ、きっと」
 よくみると、蓋の下で黄色いお米が炊かれている。

 「あ、本当だ。シュウ、料理とかできるんだね」
 「エリコは、あんまりしないでしょ」
 図星。でも、どうしてわかったんだろう。
 「だって、調味料の種類はいっぱいあるのに、どれもこれもぜんぜん減ってない。買ったはいいけど、それだけで満足しちゃうタイプだね」
 彼がからかっている。うれしいと思った。

 「うるさいなあ、基本的なやつは作れるわよ。カレーとか肉じゃがとか」
 「そっか。じゃあ今度エリコの料理も食べたいなあ」
 シュウは、キッチンへと戻って行った。

 「ね、お金とか、どうしたの?」
 お米と調味料は家に置いてあったが、魚介の買い置きなんてなかったはずだ。
 「ん、魚とか?取ってきたよ」

 「取ってきたって。お店から盗んできたってこと?」
 思わず大声を出すと、彼は慌てて否定した。
 「違う違う。海に潜ってね、取ってきた。」
 彼は、泳ぎながら魚を捕まえるジェスチャーをした。

 「へえ、すごいね」
 感心した。さすが半魚人。

 「さて、できたよー」
 出来上がったパエリアを皿に盛り付けて、運んできた。
 「食べてみてよ」
 彼はそういって、スプーンを差し出す。
 いただきます、と言って一口食べた。

 美味しい。

 「美味しい?」
 そう聞く彼に、ただ頷いた。
 彼は、よかった、とほほ笑んで、自分も食べ始めた。

 でも。

 なにか言いたげな私の顔を察知してか、彼が顔をしかめた。
 「いや、これ共食いじゃないからね」
 あ、ばれた?
 「いや、そんなこと思ってなかったけど……」
 語尾をごにょごにょと誤魔化した私をみて、彼が苦笑いをした。
 「うそだー。図星だ、って顔に書いてあるよ。それにね、魚類が魚類食べて共食いなら、ニンゲンがウシやブタ食べるのも共食いでしょ?同じ哺乳類なんだから。サメはイワシ食べるよ。同じ魚だけど。」

 「そっか」というと、「ほら、やっぱり共食いだとおもってたんだ」と指摘された。

 彼につられて私も笑った。
 私は、彼に惹かれている。
 恋愛は笑わせたほうが勝ちなのだ。

 「ごちそうさま」
 ゆっくり味わって、食べ終えた。こんなに美味しいものを家で食べたのはいつぶりだろう。
 「エリコ、俺もずっと部屋にいるのも退屈だからさ、働こうとおもうんだけど。」
 「うん、いいんじゃない」
 だが、彼に働けるところはあるだろうか。今時、どこで働くにも身分証明書がいる。

 あ、そういえば。
 「駅前のお寿司屋さんね、釣った魚を買い取ってくれるらしいよ。明日も海に行くなら、獲った魚を売ってきたら」
 「へえ、魚が売れるんだ!」

 目を輝かせる彼が、眩しい。


 「エリコ、疲れてるんでしょ。お風呂入ってきたら」
 シュウにそう言われて、どきりとした。
 昨日は疲れていたのかそのまま寝てしまった彼だが、今日はどうなのだろう。
 もしそういう雰囲気になったら、受け入れるか拒否するか、決めかねる。
 「うん……」
 どちらに転んでもいいように念入りに体を洗ったが、風呂からあがると彼は寝てしまっていた。





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