FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←break4. Miss Baltimore Crabs →人魚の王子様 4話
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 赤い鬼と青い鳥
もくじ  3kaku_s_L.png 眠りの森の天使
もくじ  3kaku_s_L.png 人魚の王子様
【break4. Miss Baltimore Crabs】へ  【人魚の王子様 4話】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

人魚の王子様

人魚の王子様 3話

 ←break4. Miss Baltimore Crabs →人魚の王子様 4話

 気がつくと、海の家に横たわっていた。
 私の顔を覗き込む男は、シュウだ。
 どうやら私は気を失っていたらしい。

 「よかった、目を覚ましたんだね」
 あなたが、私を助けてくれたの。
 そう聞こうとしたが、声になる前に咳こんでしまった。

 「病院、行くかい?」
 海の家の主人が、私に声をかけた。
 「大丈夫、です」
 今度は、かろうじて声が出た。
 「彼がね、おぼれたあんたを助けてくれたんだよ」
 そういって、主人はシュウを指差した。

 やはり。
 「ありがとう」
 そう言うと、彼はほほ笑んだ。

 体をおこして、椅子に座った。
 「もう少し寝てた方が」と海の家の主人には言われたが、もう平気そうだった。
 「あの、温かい飲み物とか、ありますか?」
 海の家の主人は、あいよ、と言って奥に引っ込んだ。
 私と彼が取り残された。
 ひどい雨のためか、あたりには私と彼しかいない。

 「アリムラエリコ、泳ぎ、下手だね」
 すこし腹が立ったが、私は溺れて彼に助けられたため、何も言い返せない。
 「フルネームで呼ばないでよ」
 彼は不思議な顔をした。
 「フルネーム、て何だ」
 「だから、有村かエリコか、どっちかだけでいいって」
 「どっちがいい?」
 そう聞かれたのは、初めてだ。
 「じゃあ、有村」
 「おけ。アリムラ、泳ぎ、下手だね」
 「ちょっと!さんくらいつけてよ」
 彼は、苦笑いをした。
 「エリコは、わがままだな」
 あら、呼び方がエリコになった。すこし恥ずかしい気持ちはあったが、イヤではなかった。

 「なあ。聞いていいかな」
 暖かいコーヒーを飲んで、だいぶ気分が落ち着いたところで、彼が切り出した。
 「なに?」
 「ここは、天国かな」
 冗談を言っているのかと思ったが、彼の顔は真剣だ。
 「さっきも言ってたけど……本気?ここは、天国じゃないよ」

 「そうか。俺はてっきり、死んだのかと思った」
 「私、溺れかけたけど、あなたが助けてくれたんでしょう?」
 「いや、その前の話。」

 そういうと、彼はここに来るまでの話を始めた。
 「俺、ついさっきまで剣の練習試合してたんだよ。俺すこしよそ見をしてしまってさ。その時相手の振った剣が、俺の頭にもろに当たったんだ。あ、俺死んだな、と思った。で、気が付いたらあそこで寝てたんだ」
 そういって、砂浜に上がったボートを指差した。
 「あのボート、死んだウェディを送り出すためのものなんだ。だからてっきり、俺は死んで、天国にたどり着いたんだと思った。なぜか、姿も人間になってた。」

 「ウェディって、なに?」
 私が訊くと、彼は心底驚いていた。
 「ウェディ、知らない?」
 「うん、知らない」
 「じゃあ、レーンの村は?ジュレットの町は?どこにあるのか知らない?」
 「知らない。聞いたこともないよ」
 彼は、黙りこんで考え込み始めた。

 「ねえ」
 しばらく経っても彼が眉間にしわを寄せて黙りこくっていたので、思い切って話しかけた。
 「あ、ごめん。ウェディっていうのは、俺たちの種族のことなんだ。こういうの」
 そういうと、彼は胸の前で手を組んで目を閉じた。
 すると、彼の肌はどんどん青くなり、耳、手の甲、背中あたりに魚のヒレのようなものが現れた。驚いて、声も出ない。しかし先ほど私を助けてくれたのは、まぎれもなく目の前にいるこの彼だった。
 「でも誰もウェディを知らないんなら、人間の姿でいたほうがいいね」
 またお祈りするようなポーズをとると、人間の姿に戻った。
 「前までは、こんな変身ができるだなんて思わなかった。でも、さっきエリコが溺れているのを見た時、ウェディに戻りたいと思ったんだ。海の神さまにお祈りしたら、ウェディに戻れた。俺、こんな事が出来たんだな。初めて知った。」

 目の前で起きたことは、到底信じられないが、彼が私を助けてくれたことだけは事実だ。
 「これから、どうするの?」
 「どうしよう。どうやったら、レーンに帰れるんだろう」
 「私、レーンがどこにあるのかも知らないし……。」
 「そうだよね。今日はどこかに泊まって、ゆっくり考えようかな。この近く、宿屋とかあるかな」
 「ホテルとか、てこと?ビジネスホテルとかあったと思うけど。お金とか、持ってるの?」
 「あ、金か。持ってない。今夜は野宿かな」

 私は、意を決して言った。
 「もし、行くところないんだったら、私の家に泊まる?せまいけど。客用の布団くらいなら、あるよ。」
 「いいの?」

 自慢じゃないが、一人暮らしを始めてから、自分の部屋に男を入れたことはほとんどない。だが、溺れた私を助けてくれた彼に、なにか恩返しをしたかった。
 なにより私は、メンクイなのだ。

 「いいよ。」
 そう答えながら、彼を家に入れる前にあそことあそこは片付けないと、と考えていた。

 やっと雨が上がったようだ。
 海の向こうに、虹がかかっている。
 





banner.gif
面白いと思ったら押してくださいね


関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 赤い鬼と青い鳥
もくじ  3kaku_s_L.png 眠りの森の天使
もくじ  3kaku_s_L.png 人魚の王子様
【break4. Miss Baltimore Crabs】へ  【人魚の王子様 4話】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【break4. Miss Baltimore Crabs】へ
  • 【人魚の王子様 4話】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。