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眠りの森の天使

眠りの森の天使 最終話

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 第5章 53歳の春、眠りの森の天使

 「ばあちゃん、これ何?」
 今年5歳になる孫のユウナが、ただの河原の石を拾い上げた。
 「それは石だよ」
 「こんなにきれいなのに、石なの?」
 川の流れに磨かれて光沢がでた石を、めずらしそうに眺めている。
 「そうだねえ。すごくきれいだね」

 「母さん、ユウナ。ここでお昼にしようよ」
 そう言ったのは娘のサキ。
 娘の夫は河原にレジャーシートを敷いて、昼食の準備を始めている。

 娘のサキは、今年28歳だ。
 短大をでてすぐに結婚・出産し、ユウナが1歳になってからはパートを始めた。
 サキが働いている間は、私が孫の世話をしている。

 ユウナを預かっている時、一緒にテレビアニメを見ていると、主人公の女の子たちが森をピクニックして、河原でお弁当を食べるシーンがあった。
 それを見てからというもの、ユウナはピクニックに行きたい、としきりに言うようになった。ついに根負けした娘夫婦はユウナをこの森に連れてきた。
 ユウナは、「ばあちゃんも一緒に行く」と言ってきかなかったそうだ。

 この森は、嫌な思い出がたくさんある。父が死に、級友が死に、さらに息子が死んだ。
 今回も決して来たくはなかったが、孫に誘われると断り切れなかった。

 「ばあちゃん、なんでお花持ってきたの?」
 ユウナは、私が持っている小さな花束を指さして聞いた。
 「あ、これはね。ばあちゃんの、昔のお友達にプレゼントだよ」
 父と、息子の墓参りは、毎年欠かさず行っている。
 この森に行くことになったとき、久しぶりに高校時代の級友のことを思い出した。
 彼のお墓がどこにあるのかは知らない。
 それならばあの崖に、お花の一つでもそなえようか。そう思った。

 「私、ちょっと用事済ましてくるから。先やっててね」
 あの崖は、ここからすぐのところにあったはずだ。
 娘夫婦に声をかけて、私は崖へと向かった。
 
 「ばあちゃん、待って」
 声がしたので振り返ると、ユウナは私を追いかけてきたようだ。
 「ユウナ、どうしたの」
 ユウナは、走ってきたため息をきらしている。
 「ユウナも行く」
 「行くって、お母さんとお父さんには言ってきたの?」
 尋ねると、元気いっぱいに「うん」と頷いた。
 ここから一人で返すわけにはいかない。
 仕方なく、ユウナも連れていくことにした。

 5分ほど歩くと、見覚えのある崖があった。
 「足元、気をつけるんだよ」
 ユウナに言い、しっかりと手を握って崖の手前まできた。
 
 あれから干支が3周したが、ここは何も変わっていない。

 そこには小さな地蔵があった。
 そういえば、死んだ彼の両親がここに地蔵を建てた、という話もあったっけ。
 持ってきた花束を地蔵の前に置き、目をつぶって手を合わせた。
 ユウナも、隣で同じように手を合わせている。

 「もしかして、ヒカルちゃん?」
 
 いきなり背後から声をかけらたので、とても驚いた。
 振り向くと、自分と同年代の女性が花束をもって立っている。
 私を、「ヒカルちゃん」なんて呼ぶ人はもうあまりいない。
 
 「エリコ、ちゃん?」

 高校時代の親友、エリコだ。
 同じ大学に進み、そこでも仲良くしていたが、お互い就職してからは会う機会も減り、だんだんと疎遠になってしまった。
 「ひさしぶり、元気してた?」
 そう明るく訪ねてくる様子は、まさに高校時代のエリコそのものだった。

 「うん、元気だったよ」
 
 「ねえ、ばあちゃん、だれ?」
 ユウナが、私の服の裾を引っ張りながら聞いてきた。
 「あのね、ばあちゃんの、お友達だよ」
 そういうと、ユウナの顔が少しだけ明るくなった。
 「かわいいわね、お孫さん?」
 「そうなの。孫のユウナ。ほら、挨拶して」
 ユウナは、小さな頭をぴょこっと下げて、ユウナです。と名乗った。
 
 「私もね、孫を連れてきたの」
 エリコがそういうと、エリコの後ろに隠れていた男の子が少しだけ顔をだした。
 「ヤマト、挨拶できるでしょ」
 エリコが男の子を紹介しようとしたが、またエリコの後ろに隠れてしまった。
 「ヤマトです。今年5歳になるの」
 エリコが代わりに紹介した。
 ヤマトくんが、こんにちは、と小さな声で言った。
 「ごめんなさいね、人見知りで」
 また少し顔を出したヤマトくんは、目元のあたりがちょっとエリコに似ていた。
 将来男前になりそうだ、と思った。

 ヤマトくんが、エリコの手を引いて、「おなかがすいたよ」とまた小さな声で言った。
 「ああ、そうね、もうお昼よね。」
 それを聞いて、ユウナもおなかがすいてきたようだ。
 「ね、これ私の連絡先。今度、お茶でもしましょうよ」
 そういって、エリコは手帳に電話番号を書き、私に渡した。
 「そうねえ。積もる話もあるし」
 ユウナがバイバイ、と手を振ると、ヤマトくんもちいさく手を振り返した。

 「おなか、すいた?はやくお母さんたちのところ戻ろうか」
 娘夫婦たちのところに戻らないと。予想外に時間がかかったので、心配しているかもしれない。
 「ヤマトくんてね、シュンくんに似てたね」
 途中、ユウナがこんなことを言いだした。
 「シュンくんって、誰?」
 私が尋ねると、ユウナはテレビアニメの名前を言った。あの、主人公の女の子たちがピクニックをしていたやつだ。シュンくんは、主人公の女の子が片思いする男の子だった。
 そういえば、髪型や顔の雰囲気が少し似ている。
 「そうね、少し似てたね。かっこよかった?」
 ユウナに聞くと、「うーん、でもシュンくんの方がかっこいい」と答えたので、少し笑った。

 娘夫婦のところに着くと、サキに「遅かったじゃない」と文句を言われた。
 どうやら、食べずに待っていたらしい。
 「先に食べててもよかったのに」
 と言うと、サキは「そういうわけにいかないでしょ」と怒った。

 「ユウナね、ヤマトくんとケッコンしてもいいよ」
 昼食を取りながら、ユウナが言いだした。
 サキも、サキの夫も驚いていた。
 「ヤマトくんって誰?」
 「私のお友達の、お孫さん。ユウナと同い年だって」

 「お父さんとお母さんは、どうしてケッコンしたの?」
 ユウナは、サキたちに向かって聞いた。
 アニメか何かの影響で、「結婚」についてたいへん興味をもっているらしい。
 「ききたいー?」
 夫をからかうような調子で、サキが言った。
 「やめろよ」と彼は照れていたが、ユウナが「聞きたい聞きたい」と目を輝かせたので、あきらめたようだ。

 「あのね、お母さんとお父さんは友達の紹介で出会ったんだけど、その時ね、お父さんは、お母さんが天使に見えたんだって」
 キャー、とユウナが嬌声をあげる。
 「どうして?どうしてお母さんが天使に見えたの?」
 ユウナが父に聞いた。
 彼は照れて頭を書いていたが、やがて話し始めた。
 「お父さんな、夢の中で天使に会ったことがあるんだよ。」
 意外な告白に、ユウナだけでなく私も驚いた。

 「お父さんがユウナくらいの年のころ、死にかけたことがあってさ。こんな感じの森で友達と遊んでたら、急に息が苦しくなって、目の前がまっくらになっちゃったんだよ。手も足もどんどん動かなくなってさ。これはもう死んじゃうんじゃないかなーって思ってたら、目の前に天使があらわれたんだ。その天使がな、聞いたことない歌を歌ってくれて、そしたらお父さんの周りに青い光がバアーっと広がったと思ったら、お父さん目が覚めてたんだよ。」

 持っていた箸を、落としてしまった。

 「後から聞いたら、その森では体にわるーいガスが出てくることがあったらしくてさ。お父さん、それ吸いこんじゃったみたいなんだ。で、本当に死ぬかもしれなかった、ってお医者さんが言ってたんだって。お父さんのほうのおばあちゃんが言ってた。だからさ、多分あれは本当の天使で、お父さんを助けてくれたんだな、ってずっと思ってたんだ。初めてお母さんと会った時、昔会った天使にそっくりだ、って思ったんだよ」

 ユウナが、お母さん天使、とはしゃいでいる。

 「そうそう。だからね、お父さんにとって、お母さんは、天使なんだよ」
 「ユウナも天使に会いたい」
 「ユウナにとっても、お母さんは天使だよ」
 サキが言うと、ユウナは「えー、天使は、怒ってばっかりじゃないよ」と口をとがらせた。「それはユウナが悪戯ばっかりするからでしょう!」と言うと、サキの夫も声を出して笑った。

 声が出ない。

 「タケルさん、あなたもユウナが悪戯したら叱ってやってよ。私ばっかり怒るのしんどいんだから」
 「えー、俺ユウナに嫌われたくないなあ」
 サキの夫は、ユウナに頬ずりをした。
 「いまは、ユウナが俺の天使だし」

 「ユウナが?」
 サキがいうと、彼は「いや、ユウナも。」と言いなおした。
 サキも、ユウナも、タケルさんも、笑っている。

 「ばあちゃん、どうしたの?」
 ユウナに指摘されるまで、自分が泣いていることに気がつかなかった。

 私は、あのとき息子の友達を助けたことを後悔し続けた。
 あのとき魔法を使わなければ、きっと息子を助けられたのに。

 でも。

 あの時、私が魔法を使わなければ、サキとタケルさんは結婚することはなかった。ユウナにも会えなかったろう。エリコとも、あのまま会えないきりだったように思う。

 今、私が孫たちと楽しい時間を過ごせているのは、あのときの魔法のおかげなのだ。

 「なんでもないの。ちょっと目にゴミが入っちゃって。」
 心配そうに私の顔を覗き込んでくるユウナに、そう言い訳をした。

 ユウナは、落ちている小枝を拾い上げると、それを左右に二、三回振ると、その枝で軽く私の頭をたたいた。
 「それって……」
 「これね、悪いことがおこらないおまじないなの。」
 ユウナが言った。

 「誰に、聞いたの?」
 「アルノーくん。夢の中に、よく出てくるの。」
 言葉が、出ない。

 「ユウナ、またその子の夢見たんだ。よく見るねえ」
 サキが言う。

 「おばあちゃん?」
 何も言えなくなった私の手を、ユウナが握った。

 「ううん、なんでもない。ユウナ、今度アルノーくんにあったらね、ありがとうって、伝えてくれる?」

 ユウナが私を見上げる。
 「うん。でもどうして?」
 「だって、とっても大きな宝物をくれたから」
 そういって、ユウナの頭をなでた。


 <完>





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