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眠りの森の天使

眠りの森の天使 4話

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 第3章 29歳の夏、子供が死んだ 後篇 

 タケルくんとサキを車に乗せて、絶対に出ないよう言いつけ、私たち三人はユウスケを探し回った。

 河原を中心に探し歩くが、ユウスケは見当たらない。

 「ユウスケー、返事してー!」

 さっきから叫び続けているが、一向に返事はない。

 完全に日が沈んだ。あたりは真っ暗だ。
 懐中電灯を持ってくるのを忘れたことを後悔しつつ、かすかな月明かりを頼りに森の中を探し続けた。

 「どこにいるの、ユウスケ」
 涙がこみ上げてきて思わず座り込んだその時、ユウスケは目の前に現れた。

 「お母さん……」

 ユウスケも、泣いていた。
 「ユウスケ!」
 思わず、ユウスケを抱きしめた。

 ユウスケは、トンボを追いかけていったところ、道に迷って戻れなくなってしまったらしい。
 「もう、心配かけて」
 ユウスケの手をとって、みんなのいた場所に戻った。
 もうこの手は離さない、そう誓った。 

 「ごめんなさい、ユウスケ見つかりました。道に迷っちゃったみたいで」
 リリコさんに謝ったが、彼女はひどく取り乱していた。

 「あの、どうされたんですか……?」
 
 わけがわからない私に、代わりに答えたのはサキだった。
 「あのね、タケルくんね、お兄ちゃんを探しに行くんだっていって車から出て行っちゃったの。」
 
 「それで……さっきタケルを見つけたんだけど。そこの地面が窪んでいるところに倒れてたの。名前呼んだんだけど意識がなくて。聞いたことあるの、ここのあたり、有毒なガスが発生することがあるって。でも、まさかこんなことになるなんて……」
 リリコさんは、泣き崩れた。
 
 「それで、それでタケルくんは」
 「車が、動かないのよ。主人が抱えて、病院に」

 車に飛び乗り、エンジンをかけようと何度も鍵を回してみたが、エンジンがかかる気配がない。バッテリーがあがってるわけじゃない、ガソリンも十分あるのにどうして。

 何度か鍵をひねっていると、急にエンジンがかかった。
 「早く、乗ってください。ユウスケもサキも。早く乗りなさい」

 全員が乗ったので、車を発進させた。
 ここから病院へ行くとすれば、森の入口近くにある霧果総合病院が一番近い。お父さんも、きっとタケルくんをそこに連れて行ったはず。

   ******

 病院へ着くと、やはりタケルくんはそこに運ばれていた。
 医者は、かなり危険な状態だ、と説明した。

 ガラスの壁を隔てた向こうで、タケルくんが様々な処置を受けている。

 祈るような気持ちでそれを見つめていた。
 私たちが到着して10分以上経ったころだろうか、それまで規則的にリズムを刻んでいた心電図が、急に単調な音に変わった。
 
 心臓が止まったらしい。

 医者が心臓マッサージを始めた。


 私の左手を、ユウスケがぎゅっと握った。
 「タケルくん、大丈夫だよね?」
 ユウスケの手を握る手に、力が入る。
 「ザオ!」
 私は、叫んだ。


 リリコさんが、こっちを見た。驚いて、そのあと怒りの表情になった。
 「あんた、こんなときにふざけないで!元はと言えば― 」

 その時、タケルくんの周囲が青く光ったかと思えば、また心電図がピ、ピと動き出した。

 生き返ったのだ。

 半信半疑だったが、本当に魔法が使えた。
 タケルくんの両親は泣き崩れた。
 私は、ユウスケとサキを抱き寄せ、もう大丈夫だからね、と言った。

   ******

 その夜、ひさしぶりにアルノーくんが夢に現れた。

 「魔法、使っちゃったね」
 「うん、本当に生き返るとは思わなかったけど」
 そういうとアルノーくんは、軽く頬を膨らませた。
 「僕が嘘ついてると思ったの?」
 「ううん、そんなこと思わないよ。だって、ヘルガ僧正の息子だもんね」
 アルノーくんは、へへへ、と笑った。

 「ありがとうね、タケルくんを助けてくれて」
 「何言ってるの、助けたのはヒカルちゃんでしょ」
 「アルノーくんが魔法教えてくれなかったら、タケルくんは助からなかったから。さすがだね」
 アルノーくんは、静かに微笑んでいる。

 「ねえ、本当にこの魔法使えるのって一回きりなの?」
 「そうだね、魔法を使うにはMPってのが必要なんだけど、ヒカルちゃんはMPを使いきっちゃった。MPを回復できるのは、冒険者だけだからね」
 「そっか、残念だな」

 「後悔、してるの?」
 「ううん、今のところは。タケルくんが死にそうになったのはユウスケのせいだし」
 「そっか。……あのね、」

 アルノーくんが、何かを言いにくそうにもじもじしている。

 「どうしたの?」
 「あのね、ぼく、もうヒカルちゃんには会えないかもしれない」
 突然の言葉に、驚いた。
 「どうして?」
 「ぼくね、ビョーキなんだって。もうすぐ死んじゃうみたい」
 「病気って、ピンピンしてるじゃない」
 「ううん、聞いたもん。シニガミのナントカっていうビョーキでね、すごく苦しいの。苦しくて、イシキだけがこっちに飛んできちゃったんだって。でね、もうすぐ死んじゃうかもしれない。お母さんでも治せないんだって、このビョーキ。みんなぼくに隠してるけど、ぼくには分かるんだよ。お母さんの息子だから。」

 ちょっと待って。だって。
 「でも、お母さん、どんな病気でも治せるって。死んだ人も生き返すことができるって言ってたじゃない」

 「お母さんにも、フカノウはあるんだって」
 アルノーくんは私に背を向けて歩きだした。

 「バイバイ、ヒカルちゃんと遊べて、楽しかった」
 追いかけようとしたが、体は動かない。

 ああ、夢から覚めるな。

 そう思ったところで目が覚めた。
 太陽の光が眩しい。
 それきり、アルノーくんは私の夢に現れることはなくなった。

   ******

 タケルくんは私立の小学校に合格し、リリコさんたちは遠くに引っ越して行った。
 
 そして私は41歳になり、この選択を後悔する。





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