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眠りの森の天使

眠りの森の天使 3話

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第3章 29歳の夏、子供が死んだ 前篇 

 29歳になった私の生活は、朝5時半に始まる。
 幼稚園に行く子供たちの弁当を作るためだ。
 上の子はユウスケ、5歳。下の子はサキ、4歳。

 大学を出たあと小さな会社に就職し、職場の先輩である西野と付き合い始めた。23歳のとき、妊娠が判明した。予定外の妊娠だったので産むかどうかとても迷ったが、6歳年上の彼はこの妊娠をとても喜んでくれ、産む決意をした。
 順序が逆になってしまったが、きちんとプロポーズも受け、婚約指輪も貰った。
 ユウスケが生まれた後、しばらくしたら仕事に復帰するつもりでいたのに、翌年また妊娠していることが発覚し、先送りとなった。サキが生まれ、そのまま専業主婦として、2人の子育てと家事に追われている。

 「ヒカルさん、この後、お茶しない?」
 幼稚園に子供たちを迎えに行くと、ユウスケと一番仲のいいタケルくんのお母さんが、話しかけてきた。
 「はい、行きましょ」
 今36歳のタケルくんのお母さんは、リリコさんという。すこし派手な身なりをしていて、他のお母さんたちからは浮いた存在だったが、私と彼女は結構気が合った。保護者たちの多くは「ユウスケくんママ」といった風に呼びあう中、彼女は私のことを、ヒカルさん、と呼ぶ。

 幼稚園の近くに、小さな喫茶店があった。そこは子供たちが退屈しないようキッズスペースもあるので、お母さんたちがよくお喋りに利用している。この日も、私たちの他に何人か顔見知りのお母さんたちがいた。軽く挨拶をした後、私たちは席についた。ユウスケとサキ、それからタケルくんは、キッズスペースで遊んでいる。私たちの席からは子供たちがよく見えるので、安心だ。

 「こないだの山登り、すごく楽しかったですね。誘ってくれてどうもありがとう」
 この前の週に、タケルくん一家と山登りをした。近所にある本当に小さな山だが、小さな子供を連れて歩くにはちょうどよかった。 
 「今度はね、来週バーベキューしようと思うんだけど、一緒にどう?」
 「へえ、いいですね。ご主人、アウトドアお得意ですよね。うちのは全然で。うらやましい。」

 山登りの時も、「もう歩けない」とぐずったサキをおぶってくれたのは、リリコさんのご主人だった。
 うちの夫はといえば、ユウスケと一緒に先へ先へと歩いて行ってしまって、そんなことに気づきもしなかった。

 「そんなことないわよ。ただ好きなだけで。本当お金がかかる趣味で、イヤになっちゃう。」
 「ううん、本当に。いいご主人ですね。それでバーベキューは、どこで?」
 「幼稚園の前の道ずっと北に行ったところに森があるでしょ、あそこの河原でどうかなって」

 父と、コウジくんが死んだところだ。
 言葉につまった私を見て、リリコさんは驚いていた。
 「だめかな、ソウタくん一家とかあそこでバーベキューしたって言ってたよ」

 しらけることを言って水を差したくない、と思った。
 10年以上昔のことを引きずるなんて、ばからしい。
 「ううん、いいと思いますよ」
 笑顔を作って、そう答えた。

 「じゃあ、決まりね。うちのパパ、もう張り切ってんのよ。ユウスケくんのお父さんはどうかな、都合つきそう?」
 「どうかな、聞いてみますね」
 リリコさんは子供たちに向かって、声をかけた。
 「タケル、ユウスケくんたちもバーベキュー来てもいいって。楽しみだねー。」
 タケルくんとユウスケ、サキが三人ではしゃぎだした。

 高校生のあの時以来、森に入ったことはなかった。

   ******

 バーベキューの日、夫はどうしても都合がつかないということで、タケルくんとリリコさんとご主人、それから私とユウスケとサキ、の六人でバーベキューをすることになった。
 子供たちがはしゃいでいるのを見て、思い切り楽しむことに決めた。実際、とても楽しかった。
 
 「ほら、お肉だけじゃなくて野菜も食べなさい」
 ユウスケに注意すると、いやいやピーマンを口に運んだ。思いっきり顔を歪めたユウスケを見て、タケルくんとサキは大笑いした。

 あらかじめ用意していた肉や野菜が、おおかた片付いた。
 子供たちは、もうお腹いっぱいだといって、早々に遊び始めた。
 今は、川に石を投げて何回跳ねさせられるかを競っている。

 リリコさんと私は、テントの下で休憩中だ。
 「ふう、ひと段落ね」
 リリコさんが、子供たち用のジュースを飲みながら言った。
 「そうですね、そろそろ暗くなりそう」
 夕日が、山の向こうに沈んでいく。

 「おーい花火、しようぜ」
 子供たちと石を投げるのに夢中だったリリコさんのご主人が、こちらにむかって声をかけた。
 「だめ、バーベキューセット片づけてからね。暗くなってからだと片づけるのしんどいでしょ。ほら、あなたも手伝って」
 リリコさんがそういうと、「へいへい」といって片づけを手伝ってくれる。
 自分の夫と比べるわけではないが、本当にいいご主人なのだなと思った。

 バーベキューセットは大体片付いて、車に積み終わった。
 「じゃ、最後花火をして帰ろっか。きょうは疲れたねえ」
 「そうですね。ユウスケ、サキ、タケルくんー。花火するから、おいでー。」
 すこし離れたところにいた子供たちに向かって、声をかけた。

 サキが走ってきて、言う。
 「お母さんあのね、お兄ちゃんがいない。」
 「え」
 あわてて辺りを探すが、ユウスケの姿が見当たらない。

 「ユウスケ、どこに行ったか知らない?」
 近くにいたタケルくんに尋ねても、しらないという。
 「さっきまで一緒にいたんだけど、いつの間にかいなくなっちゃった」
 タケルくんも、涙目になっていた。

 まもなく日が沈んで、真っ暗になりそうだ。
 不安が、暗闇と一緒に押し寄せてくる。





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